天たつと私
vol.06
「この美味しさを伝えたい」
汐うにはそう思わせる手土産。
「この美味しさを伝えたい」
汐うにはそう思わせる手土産。
株式会社増田喜
代表取締役
増田喜一郎様
株式会社天たつ
十一代目店主
代表取締役社長
天野準一
2018.08.15

未来に誇れるように、
紙ゴミをリサイクルする。

 

天野 本日はありがとうございます。まずは増田さんについていろいろとお聞きしたいと思っています。増田さんが代表取締役を務める株式会社増田喜は、70年以上にわたり福井のリサイクル業界におけるリーディングカンパニーとして地域に貢献されていますよね。

 

増田 1949年の創業以来、古紙を中心に再生資源卸売業を営んでおります。私どもの業種は古紙を集めて製紙工場に売るという商売。発生物を扱うので、どうしても受け身な仕事になってしまうなか、創造性のある仕事がどこまでできるか常にチャレンジしてきました。

 

天野 増田喜さんというと、「エコ紙くらぶ」や「リサイクル教室」などさまざまな取り組みをされている印象です。

 

増田 ありがとうございます。では、ひとつ天野さんに質問ですが、今福井県全体でどれくらいの紙ごみが燃やされているかご存知ですか?

 

天野 どれくらいでしょう…まったく想像がつかないですね。

 

増田 実は、福井では燃えるゴミのなかでも紙を燃やすためだけに毎年8億円くらいの税金を使っているんです。以前、福井の若手経営者を代表して役所の方に同じ質問をしたことがあるのですが、誰も答えることができませんでした。

 

天野 そんなにかかるんですね。恥ずかしながら知りませんでした。

 

増田 紙を焼却するのではなく、リサイクルできるようになれば、もっと有効な税金として地域に回せると思うんです。環境も良くなるし、経済も良くなる。いいことずくめです。普段から役所の方にも「紙を燃やすのではなく、積極的にリサイクルできる政策を作ってください」とかけあっていますが、まずは自社でも取り組みを進めていこうと始めたのが、オフィスで排出される古紙を定期的に回収する「エコ紙くらぶ」や子ども立ち向けの啓発事業「リサイクル教室」です。「エコ」という言葉には「エコロジー(環境)」と「エコノミー(経済)」があると思っていて。弊社では環境と経済、どちらもサポートしていきたいと考えています。

 

天野 素晴らしいですね。天たつはもともと、雲丹をお城のお殿さまに納めるという商売からスタートしました。そこから少しずつ一般のお客様へお売りするようになって今に至ります。今でこそ、海女さんたちの生業を守ることや環境への配慮についても考えるようになりましたが、増田喜さんのように「地域社会や世界が良くなるため」という大義を掲げていて、地域の人たちも巻き込みながら事業を進めている姿勢は私どもも見習いたいです。

 

増田 私は平成28年に親父から増田喜を継ぎましたが、当時は「クズ屋」と言われることもありました。今でこそスーツを着ていますが、家業に入って最初の6、7年は回収車に乗って町中の古紙を回収しに行っていたんですよ。私は家業に入った身なので何を言われても構いませんが、社員の子どもたちが「お前の親父はクズ屋で勤めてるんか」って言われるのは忍びない。「いい会社に勤めてるね」って言われるようにしていかなければ。そんな思いで続けてきて、少しずつ私たちの業界のイメージが変わってきている手応えを感じています。

 

天野 すごい。着実に業界を変えておられますね。逆に今課題に感じていることはあるのでしょうか。

 

増田 いかに古紙を集めるかということに関してはいろんな挑戦をしているのですが、お金になるかどうかが本当に難しいところです。よく商工会議所の方からも「この取り組みは社会貢献的な要素が強すぎませんか。増田さんの儲けは何ですか」って言われてしまうんです(笑)。もちろん、メリットがないわけではありません。リサイクルがたくさんできる環境が作られることで、うちの事業が長く継続されることになるのですが、どうしても公的な要素が強い業種だとは思っています。

 

天野 そこまで自社の利益だけでなく、社会のことを考えて増田さんが取り組む原動力は何なのですか?

 

増田 時代や社会のせいにして、もし会社が傾くようなことがあればきっと後悔してしまうと思うのです。だから「未来のために、今のうちにこれやっておこう!一緒にやろうっさ」と多くの人を巻き込むようにしています。仕事も、もちろん遊びも一生懸命ですよ。

手土産は相手を思う気持ちや
大切さを表現するもの。

天野 今回は普段からご利用いただいているお客様から忌憚ないご意見を伺い、天たつの商品をより良いものにできればと思っております。増田さんは普段、天たつをどのような時にご利用いただくことが多いでしょうか。

 

増田 私はとにかく天たつさんの味が好きなので、お客様への手土産や自分用にも購入しています。出張に行く時など、日本酒を持っていくと重いですが、汐うにであれば5、6個持っていってもかさばらない。特に県外のお客様への土産を考えると、「福井お土産、天たつの汐うにです」とお伝えするだけで喜んでいただけます。かばんに入れやすいし運搬が楽で相手にも喜ばれる。持ち歩くお土産としては最高だと思っているので、いつも福井駅で汐うにを購入してから向かいますね。

 

天野 ありがとうございます。それは大変嬉しい言葉ですね。ご自宅ではどのようにして食べておられますか?

 

増田 汐うには酒の肴にもご飯と一緒に食べても万能なんです。特に海苔と一緒に食べると磯の風味が増して止まらなくなるんですよ。正月などのちょっと特別な時や家族が県外から帰省した時にも、汐うにを買って楽しむことが多いです。

 

天たつさんは粉うにのふりかけや干物もおいしいですよね。お中元やお歳暮を送る時に自宅用にも購入して冷凍しておくんです。家にお客さんが来たときやちょっとぜいたくな気分になった時にいただきますね。

 

天野 なるほど。手土産を買う時には普段どんなことを考えて選んでいるのでしょうか。

 

増田 渡す人やシーンを考えて選びますが、県外のお客様には「福井感」を感じてもらえるものをお土産にしたいなと思っています。ここでしか買えないというのも大事なポイントですね。世の中には美味しいお菓子などもたくさんありますが、「あそこのスーパーで買えるな」というものでは嬉しさも半減してしまいますよね。「わざわざ天たつさんまで買いに行ってくれたんだ」というくらいのこだわりを出せるお土産をお渡ししたいと思っています。 

 

お土産って、相手を思う気持ちや大切さを表現する役割もあると思うんです。特別感があるお土産をお渡しすると、相手もその気持ちを受け取ってくれるのではと思っています。

 

細部までこだわり、
「天たつらしさ」を
出してほしい。

天野 以前、お客様から「取引先に汐うにを渡したいが、好きかどうか分からないので渡せない」と言われたことがありまして。

 

増田 はじめてお渡しする方は好みがわからないので迷うことはありますよね。しかし、日本酒やお米が好きな方であれば、苦手な人はいないのではないかなと思います。汐うにはどちらにも合いますから。

 

もちろん、予想が外れることもあります。しかし、まずは「私はこれをあなたに贈りたいんです」という気持ちを込めてお渡しすることが大切だと思うんです。だから、私ははじめて汐うにをお渡しする方には必ず天たつのことを語るようにしています。

 

「これは福井の天たつという所で作られてて、福井ではみんな好きなんですよ。僕、大事な人にはこれ持っていくようにしてるんです。ちょっとクセがあるんですけど、お酒にもご飯に乗せてもおいしいと思うので食べてみてください。もしお口に合わなければ、誰かは好きだと思うんで」って。大事な人に贈りたいなという気持ちをお伝えできればいいのではないでしょうか。もしお好みでなかったら「次、違うの持ってきますね」でいいと思うんですよ。

 

天野 ありがとうございます。汐うにに対する増田さんの愛をすごく感じます。

 

増田 そう思うと今後の天たつでは、「汐うにの次に持って行ってほしい」というお土産があると良いかもしれません。汐うにを食べた後に食べてもらいたい商品のストーリーを天たつの歴史やこだわりなどに乗せて発信することで、「手土産は天たつで選ぼう」という流れに持っていけるといいのではないでしょうか。

 

天野 おっしゃる通りですね。うちの主力商品は汐うにですが、最近では海産物も増えています。父の代では商品の9割以上が汐うにでしたが、近年温暖化でウニが採れなくなっているのを見据えると、ここからどうしようかと迷うこともあります。

 

増田 私たちは自分たちで物を作り出すことがほとんどない業態ですが、天たつさんは長い歴史のなかで、汐うにをはじめいろんな商品を生み出し世に出してきた強みがありますよね。それを融合させるだけでいろんなものが生まれるんだろうなというワクワク感を御社に感じています。

 

天野 そうですね。最近は汐うにとエビやカニを合わせた『うにあわせの甘海老』という商品にも力を入れてます。汐うにから派生した商品展開がお客様にも好評なようです。「天たつといえば汐うに」というのがうちの代名詞でもありますので、汐うにをもっともっと魅力ある物に変えられるといいなと思っています。

 

商品だけでなく、パッケージや手提げなどデザインや質感にも工夫しています。私の勝手な主観かもしれませんが、天たつをご利用いただくお客様は特に、手土産を渡す相手に気を遣われる方が多いように思います。そういう方に今後も汐うにを選んでいただけるよう、私どももお渡しする方のことを思って細部にまでこだわりたいですね。

 

増田 こういうことは本当に大事ですよね。手提げ一つとっても大きさや質感、お渡ししたあとも使っていただけるシーンまで想像するなど、ちょっとしたこだわりでも気付く人は気付きます。そういう「天たつらしさ」をどんどん出してほしいですね。

 

天野 ありがとうございます。今以上に頑張りますので、今後ともご愛顧お願いいたします。

PROFILE
株式会社増田喜
代表取締役
増田喜一郎様
 
役職名は取材当時のものです。

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