天たつと私
vol.09
福井をPRしたいという思いで贈らせていただいています。
株式会社福井銀行
取締役 兼 代表執行役専務
湯浅徹様
株式会社天たつ
十一代目店主
代表取締役社長
天野準一
2021.09.07

「福井の汐うには必ず世界の人に喜ばれるから頑張りなさいよ」と熱い言葉を掛けていただいて。

湯浅 社長に就任されて何年になるのですか。

 

天野 5年ですね。

 

湯浅 私が本店営業部の副部長の時にお目にかかったのが初めてですよね。

 

天野 そう考えるとあっという間の5年ですね。

 

湯浅 あの頃から天たつさんには当行の担当がいて、私が部長になってからは特によくご報告をいただけるようになって。それから距離感が縮まりました。 われわれは県外からお客さまがいらした時に、お土産を互いに交換するんです。その時に「ではこちらをお持ち帰りください」と、天たつさんの商品を使わせていただくことがあるのですが、高級な物が入っていても小さくて軽いと何か気が引けるなというのがあったんですね。それで、「これはちょっと考えましょうよ、社長」というところから始まって、いい案配を考えていただくようお願いしたところで…

 

天野 もみわかめのびん詰めをご提案させていただきました。

 

湯浅 そういうやりとりをしはじめた頃から距離感が縮まったかなと思っています。たしか3年前、香港でもご一緒させていただきましたね。福井県の食材を海外に売り込もうという県の企画で。

 

天野 汐うには「日本三大珍味の一つ」と言われていますけれども、福井以外ではあまり知られていない。ましてや、世界全体でいうと誰も知らない。福井で200年食べられている汐うにを海外の皆さんにも食べていただきたいなという思いがありまして、その第一歩としてご一緒させていただきました。

 

湯浅 とにかく打って出ようということで、「いい文化があるのだからずっと続けていかないといけませんね」と申し上げました。一瞬だけ売れてもだめで、私どもとしても福井の銘店として応援しておりますということで。

 

天野 あの時、湯浅様に「福井の汐うには必ず世界の人に喜ばれるから頑張りなさいよ」と熱い言葉を掛けていただいて。あれは忘れられなかったですね。あの後、フランスやニューヨークで展示する機会があって、実際に「おいしいね」と言ってくださる声もいただけるようになりました。

福井の代表的な物を持って
帰っていただきたい、
福井をPRしたいという思いで
贈らせていただいています。

天野 お客さまへの贈り物を選ばれる際、他のお店の商品ではなく天たつの商品を使う理由があれば教えていただけないでしょうか。

 

湯浅 福井の代表的な物を持って帰っていただきたい、福井をPRしたいという思いで贈らせていただいています。地元でネームバリューがある商品なので、東京や大阪などから短期出張で来られる上場企業の方々や、取引先の方々へお渡しすることが多いですね。 「珍しい物をありがとうございます」とか「これが好きなものですから」とお返事をいただけると、私もうれしいですよね。

 

天野 お酒が好きそうな方に贈っていただいているとも伺いました。

 

湯浅 宴席の場ですと締めのお土産になりますから、お酒を飲まれる方かなというのは場の雰囲気で分かりますよね。私もそうですが、類は友を呼びますから分かるんですよ。

 

天野 もみわかめのびんを一緒にするご提案をさせていただきましたが、効果のほどはいかがですか。

湯浅 相手が心地良く感じていらっしゃるかは表情から分かりますよ。われわれのお客さまというのはいち消費者でもあるわけで、相手が「おっ」と思うような土産の在り方というのを、自分の感覚を信じて天野社長に申し上げたわけです。それは全体の声から離れることがあるかもしれませんけど、採否はお店の方がお決めいただければよくて、声としては発するべきだと思います。営業マインドというやつですかね。

 

天野 お言葉は全て真実だと受け止めております。商品のサイズや重さのことも含めまして。

 

湯浅 そういう声っておそらく経営者の中には入りづらいんですよ。私は営業のトップとして4年になりますけど、そういうことをしっかり伝えてあげることが、銀行の営業として大事だと思ったんです。外していたらごめんなさいですけどね。

 

天野 それはお若い時からの銀行員としての信念であると。

 

湯浅 そうですね。1986年から30数年営業系で、今の役職になっても現場が大好きで。現場の思いを経営に生かすことが役目だと思っています。

 

決算書にはこれからどうするということが書いていない。だからお話を伺うんです。

 

 

天野 福井銀行さんは2020年12月に本店ビルを新築されましたね。あの建物は行員さんだけではなく、街と一体になって人と人との交流を育む場という印象も受けます。

 

湯浅 昭和40年代に事務センターができて以来、50数年ぶりに本部が同じ建物になったんです。 本店ビル新築を機に改めて実感しているのが、仕事は1人で考えるよりチームで組んだ方がいいということ。例えば3つの仕事を3人でやるというように。その方が絶対にソリューションが高いと思うんです。 それを促すためにワンフロアでチームで仕事をできるようにして、グループとグループの垣根もなくしました。横の連携を取れるよう、フリーアドレスで机も決まっていません。働き方改革と言われて久しいですが、ハード面をしっかり整えようというところからこういうつくりになったということです。

 

天野 興味深いお話ですね。ハードの整備に併せて、行員の皆さんにマインドの転換を呼び掛けることも必要になりそうですね。

 

湯浅 そうですね。銀行のスタンスとしては、社会が求めている物事に対してついていかなければいけない。コロナ禍を受けて、非接触型のサービスに社会の関心が向いています。銀行もその方向に向かってはいますが、あくまでもお客さまの目線で改革を進めている最中ですね。 DX(デジタル・トランスフォーメーション)で社会がどれだけ変わろうが、地域産業の育成と発展と、そこに暮らす人々の豊かな暮らしのために尽くすという当行の企業理念、これは不変なんですよ。

天野 現場が全てで、現場から本部に吸い上げられることはたくさんあるというお考えはどう育まれたのでしょうか。

 

湯浅 お客さまあっての仕事というのが銀行の業態ですよね。お客さまと向き合ってるのは現場ですから、現場を大事にして人材育成を進めていくことが重要ですよね。人材育成マニュアルみたいな本もありますけど、本の影響を受けないように私はほとんど読まないですね。座右の銘を聞かれることもありますけど、絶対「ないよ」と答えます。本を読んで「なるほど」と思うことは多々ありますけど、そういうものを肝に命じて行動することは少ないですね。

 

天野 そうでしたか。では、人材育成に当たって何か指針になるようなものをお持ちだったりしますか。

 

湯浅 座右の銘ではなくて、「好きな言葉は」と聞かれたら、「あなたに解決できないことは、あなたには起きない」と答えますね。あるアナウンサーさんのインタビューで見掛けた言葉なのですが。それを読んで、「たしかに、自分にかかることは自分で解決できるな」と。 今抱えている問題がなかなか解決しないことはあるかもしれませんけど、20年前、30年前の問題を引きずることはほとんどないですよね。僕は自分に解決できないことは自分に降りかからないと思っています。そう考えると、物事って前向きに捉えられると思うんです。

 

天野 人材育成のお話で言うと、福井銀行の皆さんはわれわれの話にとても耳を傾けてくださる実感があります。弊社の決算報告を聞いてくださった時もそうでしたが、聞くということを第一に置いてくださっているなあと。

 

湯浅 皆さん感じ方は少しずつ違うかもしれませんが、決算報告って過去の成績なんですよね。その数字で過去のことは分かりますけど、大事なのはこれからどうするかなんです。決算書にはこれからどうするということが書かれていない。だからお話を伺うんです。 社長たちの頭の中でしか分からないことがたくさんあって、日頃の会話ではたぶん半分も教えていただいてもらっていないと思います。ひざ詰めの関係になって、「実はな…」という話を教えていただけたら、銀行員としては本物です。

 

天野 地域産業の育成と発展、そこに暮らす人々の豊かな暮らしの実現、株主への還元という理念をまさに実践されていますね。

 

湯浅 トライアングルバランスと言いまして、お客さま・株主・従業員というトライアングルを均衡させる。どれも全部大事です。

 

天野 おっしゃる通りですね。私には、自分からあふれる幸せで周りを幸せにするという人生の目標があります。そのためにはまず自分が幸せにならなくてはならない。会社も同じで、まず会社の人たちが幸せにならないとお客さまに幸せを提供できないと思っています。

 

湯浅 どっちが先とか後ではなくて、全てが必要十分条件なのでね。人生や経営を追求するとはそういうことだと思います。なかなかそれができないからこそみんな悩んで頭をひねっているんですけど、難しいですね。これこそ永遠のテーマですからね。

PROFILE
株式会社福井銀行
取締役 兼 代表執行役専務
湯浅徹
1962年3月8日生まれ。
1986年 株式会社福井銀行入行。
2015年 執行役 本店エリア統括店長 兼 本店営業部長
2020年 取締役 兼 代表執行役常務 営業支援本部長
2021年 取締役 兼 代表執行役専務
役職名は取材当時のものです。

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