未来に誇れるように、
紙ゴミをリサイクルする。
天野 本日はありがとうございます。まずは増田さんについていろいろとお聞きしたいと思っています。増田さんが代表取締役を務める株式会社増田喜は、70年以上にわたり福井のリサイクル業界におけるリーディングカンパニーとして地域に貢献されていますよね。
増田 1949年の創業以来、古紙を中心に再生資源卸売業を営んでおります。私どもの業種は古紙を集めて製紙工場に売るという商売。発生物を扱うので、どうしても受け身な仕事になってしまうなか、創造性のある仕事がどこまでできるか常にチャレンジしてきました。
天野 増田喜さんというと、「エコ紙くらぶ」や「リサイクル教室」などさまざまな取り組みをされている印象です。
増田 ありがとうございます。では、ひとつ天野さんに質問ですが、今福井県全体でどれくらいの紙ごみが燃やされているかご存知ですか?
天野 どれくらいでしょう…まったく想像がつかないですね。
増田 実は、福井では燃えるゴミのなかでも紙を燃やすためだけに毎年8億円くらいの税金を使っているんです。以前、福井の若手経営者を代表して役所の方に同じ質問をしたことがあるのですが、誰も答えることができませんでした。
天野 そんなにかかるんですね。恥ずかしながら知りませんでした。
増田 紙を焼却するのではなく、リサイクルできるようになれば、もっと有効な税金として地域に回せると思うんです。環境も良くなるし、経済も良くなる。いいことずくめです。普段から役所の方にも「紙を燃やすのではなく、積極的にリサイクルできる政策を作ってください」とかけあっていますが、まずは自社でも取り組みを進めていこうと始めたのが、オフィスで排出される古紙を定期的に回収する「エコ紙くらぶ」や子ども立ち向けの啓発事業「リサイクル教室」です。「エコ」という言葉には「エコロジー(環境)」と「エコノミー(経済)」があると思っていて。弊社では環境と経済、どちらもサポートしていきたいと考えています。
天野 素晴らしいですね。天たつはもともと、雲丹をお城のお殿さまに納めるという商売からスタートしました。そこから少しずつ一般のお客様へお売りするようになって今に至ります。今でこそ、海女さんたちの生業を守ることや環境への配慮についても考えるようになりましたが、増田喜さんのように「地域社会や世界が良くなるため」という大義を掲げていて、地域の人たちも巻き込みながら事業を進めている姿勢は私どもも見習いたいです。
増田 私は平成28年に親父から増田喜を継ぎましたが、当時は「クズ屋」と言われることもありました。今でこそスーツを着ていますが、家業に入って最初の6、7年は回収車に乗って町中の古紙を回収しに行っていたんですよ。私は家業に入った身なので何を言われても構いませんが、社員の子どもたちが「お前の親父はクズ屋で勤めてるんか」って言われるのは忍びない。「いい会社に勤めてるね」って言われるようにしていかなければ。そんな思いで続けてきて、少しずつ私たちの業界のイメージが変わってきている手応えを感じています。
天野 すごい。着実に業界を変えておられますね。逆に今課題に感じていることはあるのでしょうか。
増田 いかに古紙を集めるかということに関してはいろんな挑戦をしているのですが、お金になるかどうかが本当に難しいところです。よく商工会議所の方からも「この取り組みは社会貢献的な要素が強すぎませんか。増田さんの儲けは何ですか」って言われてしまうんです(笑)。もちろん、メリットがないわけではありません。リサイクルがたくさんできる環境が作られることで、うちの事業が長く継続されることになるのですが、どうしても公的な要素が強い業種だとは思っています。
天野 そこまで自社の利益だけでなく、社会のことを考えて増田さんが取り組む原動力は何なのですか?
増田 時代や社会のせいにして、もし会社が傾くようなことがあればきっと後悔してしまうと思うのです。だから「未来のために、今のうちにこれやっておこう!一緒にやろうっさ」と多くの人を巻き込むようにしています。仕事も、もちろん遊びも一生懸命ですよ。