―お話を伺った方―
永村 様

食べるものが味を決める
――永村様
昔は壱岐(いき)にもバフンウニが結構いたのですが、もう最近は全くいないですね。海水温の上昇と、海藻がなくなってしまったことが原因です。2~3年前から海藻が増え始めてはいるのですが、ほとんど全滅した感じになったので、再度復活するにはやはり時間がかかるのではないでしょうか。
小さいウニはいるんですよ。1、2年ずっと海藻が若干増えてきているんです。石の下にバフンウニがいるので、石をひっくり返さないと分からない感じです。
――天野
石を返して手入れをしないと、ウニが住めないですよね。福井もまさにその問題があります。海藻が増えているというのは良いことですね。
――永村様
海藻についてですが、ここ2〜3年ほど、海水温が2つのエリアに分かれているような状態が続いています。たとえば、こちらの地域では、海が真っ二つに分かれたように、片方のエリアは水温が高く、もう一方は低いんです。南のほうでは、海藻が少しずつ回復してきているのですが、北のほうは依然として厳しい状況が続いている、という印象ですね。
――天野
私はウニを商売にしていますので、日本中のウニを食べていますが、やはり味が違うんですよね。質も違いますし、これは何なのだろうと考えると、結局食べるものが大きく影響していると思います。その味の違いが面白みというか、通なお客様は「味が違うね」というのを楽しまれているようです。
――永村様
最近は海藻が増えてきてはいるんですが、それに混ざって小さい藻もたくさん見られるようになりました。なぜかというと、海藻が生えると雑食性の魚に食べられてしまうんですね。だから、小さい藻ばかりが残ってしまう。それに加えて、ガンガゼなどのウニも増えていて、駆除はしているんですけど、どうしても数が増えてしまって。食べる人は食べるかもしれませんが、正直ひどい状態です。味がまったく違いますからね。
――天野
やはり浜によっても北と南で味は違いますか?
――永村様
違いますね。味の特徴としては、味が濃いものと薄いものがあって、食べたらすぐに分かりますよ。生ウニと塩ウニが違うように、もう生ウニの時点でそれぐらい違います。飲食店なんかも南のほうのウニを使うといった話もありますね。なんていうか、ベタベタとした、コリコリ感がないのは、要するに餌を食べていないからそんな感じになるのだと思いますが。

今、守るのは「信頼」と「証明」。産地証明でブランドを継ぐ
――永村様
うちの目の前から獲れるウニが良いですよ。それがもうとても美味しい。
――天野
海藻が増えているのならウニが増えてくれるといいですね。やはりアカウニは九州が多いと思うのですが。
――永村様
うちでもアカウニを出しているところもありますよ。ただ薄い色なので「これでは出せないな」という感じです。昆布などを食べさせて養殖しているのですが、なかなかあの色合いが出なくて。
――天野
なるほど。ウニを獲るときの水深も関係あるんですか?
――永村様
深さ自体はあまり関係ないですね。ただ、浅い場所のほうが身入りがいいんです。カジメが浅瀬に生えているので、そこにいるウニのほうが餌が豊富なんでしょうね。やっぱり色もきれいですし。今のところカジメは全滅していないので助かっています。
それから、ムラサキウニについてですが、昔は身に黒い斑点なんてなかったんですけど、最近は出るようになってきました。ただ、味には影響ないです。見た目だけの問題ですね。値段も変わらないので、そういうウニは炊き込みご飯に使うことが多いです。
――天野
こちらの漁は、潜水でしょうか?
――永村様
はい、素潜りです。すごいなと思うのは、今はもう皆さんウェットスーツを着ていることです。ウニが産卵し始めると、苦味が出てしまって、塩をしても身が固まらなくなるので、その時期までに漁を終えるようにしています。潜水漁の期間は大体2週間ほどで、実際には10日から12~3日くらいで終わります。この獲れる時期で、ウニの味って違うじゃないですか。やはり最初が美味しいですね。丘から獲るほうが美味しいですよ。全然違います。
――天野
断然そうですね。やはり走りの始まりのほうが味わいが良いです。身が少し小さいことはあると思いますが、遅くなってくると粒が荒くなり、味も薄くなりますね。
産地が選ぶ「大分の塩」と天たつが実践する長期熟成の工夫とは
――天野
こちらのウニはどんな塩をお使いですか?
――永村様
鉄分が入っていない塩を使うんです。塩の種類も重要で、鉄分が入っている塩だと、苦味が出てくるんですよ。あの苦味は鉄分が原因なんですね。鉄分が入っていると駄目です。苦味が出てきてしまいます。塩にこだわる専門家のような方がいたのですが、その方が言うには、大分県の塩が一番適しているらしいです。それを使って製造しています。
――天野
確かに天然のウニに塩を入れると苦味が出ることがあるなと思っていたのですが、そういうことだったのですね。
天たつの「汐うに」も実は結構寝かせているんですよ。これはブレンドしているのでいろいろなウニを使っているのですが、一番長いものは現在8年熟成させたものです。
弊社には「雲丹蔵」という貯蔵庫がありまして、そこに汐うにを貯蔵しています。温度帯も3つに分けていまして、一番低い温度帯ですと熟成が止まるのですが、少し高めの温度帯ですと熟成が進んで味がどんどん出てきます。それがウニが獲れた浜によって違うんですよ、本当に長く熟成しても美味しいウニはどこの産地のものか、試しながら、旨みを重ねて作り上げています。
――永村様
(試食して)これはすごいですね、初めて食べましたし、蔵のことも驚きです。
――天野
天たつの汐うには、福井藩、つまり国から命じられて戦場に持ち歩く保存食として作るよう命じられたそうです。保存性を高めるために、塩と水分を徹底的に抜いて仕上げていったと。水気を切っておけば、色も濃くなります。
――永村様
塩漬けにすると、天たつさんのウニのように色濃くなるんですよ。生産者の方も、一人ひとり個性があって、「このくらいでいいんじゃないか」という人もいれば、色に徹底的にこだわる人もいらっしゃいますね。
海藻が増え始めると味も変わるんですよ。ただ、昔から食べ慣れている人たちは、昔の味を欲しがるんですよね。お金に糸目をつけずに「良いものを持ってきて送ってください」という方もいますから。でも、「昔とは変わったね」と言われることもあります。以前は今と比べて甘かったですね。バフンウニでも甘かったんですよ。生で塩漬けにして食べたりしましたね。
――天野
ウニが甘かったというのは海藻の影響もありますか?
――永村様
そうですね。うちの業者さんや新しく入ってきた業者さんたちも、海藻を増やすためにいろいろと努力しているんです。でも、それだけではなくて、身入りのよくないウニをいったん獲って、別の身入りの良い環境に移して育て直したりもしています。
ウニを太らせるために、場所を入れ替えて育てるわけですが、それでも1年ではなかなか難しくて、やっぱり2年、3年はかかるんです。すぐに結果が出るものではないんですよね。でも、それをやらないと自分たちの生活費にも直結するので、やらないわけにはいきません。
――天野
本日、永村さんから壱岐の海の変化とウニづくりへの真摯な取り組みを伺い、改めて「食」は海と人のつながりの上に成り立っていることを実感しました。環境の変化に向き合いながら、ウニと海、漁業を守ろうとされる姿勢に深く共感します。私たちも、汐うにづくりを通してその想いを伝えていきたいと思います。お話いただき、ありがとうございました。
2025年3月訪問



