壱岐の現場から見るウニと海女漁|九州 長崎県 壱岐

2025.07.23

-お話を伺った方-
小坂様

 

 

塩と時間がつくる“汐うに”の味

 

――天野
壱岐(いき)のウニの種類は、ムラサキウニですか?

 

――小坂様
ムラサキウニだけですね。バフンウニはもう獲れなくなりました。昔はけっこう獲れていたんですよ。アカウニは生食向きですね。

 

――天野
ムラサキウニは、海水温が高くても元気というか、むしろ今は増えてる印象があります。

 

――小坂様
加工品としても使うのはムラサキウニ、つまりクロウニだけです。うちでは獲ったウニはその日のうちに、内臓が混ざらないように上手にかき出して、洗わずに持ってくるんです。うちで洗って、その日のうちに瓶詰までします。今はアルコールを入れて保存するものもありますね。賞味期限は2週間くらいです。塩分はだいたい3%弱くらいで、アルコールを加えて。日持ちはしますけれど好みの問題もありますね。以前はアルコール入りが主流だったんですが、最近は少し変わってきましたね。

 

――天野
天たつの「汐うに」は本当に塩だけで仕上げてるんですよ。ちょっと召し上がっていただこうと思って持ってきました。お味見、いかがでしょうか?

 

――小坂様
(味見をして)この塩、塩分どれくらいでしょう?

 

――天野
そうですね、結構強めで。これは水分を抜いて作っているんです。バフンウニは小さいですが、その水分をしっかり抜いて、ギュッと凝縮させて、1個あたり1グラムほどになるまで仕上げています。代々この製法を守っていまして、私は11代目です。今年で創業221年になります。もともとは徳川将軍家にも納めていて、「日本三大珍味」のひとつとして承認をいただいたものなんです。福井のウニではありますが、この形で作っているのはもう本当に、うちしかないと思っています。福井藩のお殿様にもご用命いただいていて、お城に納めるときには桐箱に入れてお届けしていたんです。今でも、その桐箱を使っています。

 

――小坂様
味がいいですね。塩は強いけれど後味がいい。前にもうちで作っていたことがありますよ。

 

――天野
いくつか温度を変えながら管理していまして。凍らせず、低温のままで熟成させているんです。塩をしっかり効かせて、水分も抜いているので、天たつの「汐うに」は凍らないんですよ。先ほど召し上がっていただいたものも、いくつかのバフンウニをブレンドしていて、長いものでは10年ほど寝かせて熟成させたものも入れています。

 

 

産地ごとのウニの違いとは

 

――天野
今の壱岐では海女さんは何人くらいいらっしゃるんですか?

 

――小坂様
この地域だけで言えば、かなり減ったと思います。10人近くいたメンバーも、次々と辞めていって、後継者もいない状態です。今は、活動している人も10人もいないと思います。

 

――天野
今の時期、こちらではウニはもう獲られてないんでしょうか。この壱岐や対馬は昔からウニをはじめ、いろんな海産物が豊富な地域だと思ってるんです。イカや、カツオなんかもブランドになっていましたよね。でも最近は、なかなか思うように獲れなくなっていると聞いています。

 

こちらのウニについてですが、島の場所によっても、やはりウニの味は違ってきますか? どんな海藻を食べて育ってるんでしょうか?

 

――小坂様
北海道みたいに昆布はないですね。藻はあるんですけど、正直、名前まではよく分からないです。

 

――天野
今、日本中でウニが獲れにくくなってきていて、私たちもいろんな地域と取引させてもらっています。やっぱり天然物だけでは厳しくて、養殖の必要性を感じています。ウニは食べるもので味が変わるので、例えばキャベツを食べさせれば青っぽい風味になったりするんです。

 

――小坂様
北海道のウニは、やっぱり昆布の味がすると言われますよね。

 

――天野
ええ。何を食べているかで、ウニの味は大きく変わります。なので養殖する際も、美味しく育つような餌を選んで与えられればいいなと思っています。最近は、いろんな地域を見て回りながら、海水の味や海藻の種類、ウニの味との関係を自分なりに調べているところなんです。実際、海水の味も場所によって全く違いますしね。

 

――小坂様
北海道のウニは、どうしてあんなに大きいんでしょう?

 

――天野
やはり種類が違うんですよね。こちらのバフンウニって、小さくて3センチくらいですよね。北海道で「エゾバフンウニ」と呼ばれるものは、もう少し大きいですし。拳(こぶし)よりも大きいようなサイズなんです。北海道の海が広くて環境が違うからかもしれませんが、種類も違えば、味も違うんですよ。

 

――小坂様
いろいろご存じのようで、さすがです。今回九州を回られていると聞きましたが、鹿児島でもウニが獲れるのでしょうか?

 

――天野
鹿児島でもムラサキウニが獲れるようですね。天草の近くにも、すごく良い浜があると聞いています。私も今回が初めてで、現地に本当にあるかどうか、行ってみて確かめてきます。

 

 

未来へつなぐウニの味づくり

 

――天野
今年で創業221年目になりますが、これから先、100年後、200年後まで同じように「汐うに」を作り続けることを考えると、天然だけに頼るのはもう難しいと感じています。

 

でも養殖なら、何を食べるかによって味が全然変わる。つまり、天然を超えるウニだって作れる可能性があると思うんです。昨年は北海道を一周して、浜ごとにウニの味を調べてまわりました。今年は九州を回りながら、味と海藻、海水の関係を調べています。

 

研究してわかれば、未来にも美味しいウニが出せていくんじゃないかなと。その生ウニの味わいは、甘みとか苦味をャート化し、食感も数値化して、「この浜にはどういった海藻が生えているか」「こういう海岸形状だとどんな味わいか」、海藻や地形とリンクさせて関連性を見つけていきたいんです。日本だけじゃなく、海外でもウニの養殖はしているそうなので。

 

――小坂様
日本人はウニが好きだから、こんな高いものでも買ってくれる。私も売る側ですが、お得意さんはお盆や年末にはぜひにと贈答用に注文があります。

 

――天野
こちらのウニの味も、少しの量でもいいのでぜひ味わってみたいです。本日はお話ありがとうございました。

 

2025年3月訪問

 

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