地形やサイズが生むウニの味|北海道 船泊

2025.06.20

-お話を伺った方-
小林 様

 

 

同じ島、異なる味、地形やサイズが生むウニの味

 

――天野
船泊(ふなどまり)産のバフンウニは毎年いただいているんですが、磯の香りが本当に芳醇で、旨みがすごく濃いですね。甘みもあって。利尻産など道内のさまざまなウニもいただくものの、あの味は船泊産にしかないんですよ。香深(かふか)産ともやっぱり違う。何が違うんでしょうか?

 

――小林様
同じ島なんで同じような海流も流れてますし、特に大きな違いはないと思うんですよね。利尻などであれば、また別かもしれないけど。

 

――天野
このあたりでは、ウニはどういったものを食べているんですか?

 

――小林様
天然の昆布が多いですね。利尻昆布です。昆布の値段は入札によって上下しますが、評価の違いは昆布そのものではまずないですね。網走の海岸線もすべて利尻昆布なんですよ。

 

――天野
それが味のヒントになるかと思って、海岸線をずっと見てきたんですけど、地形の違いも影響があるのでしょうか?

 

――小林様
香深と船泊は同じ島内ですし、香深には東西両方の海岸があります。西海岸は断崖絶壁もありますが、香深は両方の特徴を持ってますね。

 

――天野
やっぱり明らかに味が違うなと感じます。海水の質も関係あるのかなと感じていまして。函館からずっとキャンピングカーで走ってきたんですが、私はその土地の海水を飲み比べているんです。本当に味が違うんですよ。函館の方の海水は、さらっとしていて、でも塩がつんとくるような印象がありました。噴火湾のあたりでは、そんなに変化は感じなかったんですが、室蘭の方へ行くと少し香りと甘みが出てきたように感じました。

 

そこからさらに日高、襟裳方面へ行くと海水がだんだん濃くなっていくような感覚がありました。そして根室を経由してオホーツク側に入ると、今度はちょっと苦みが出てきて、甘みが少し消えたような感じがしました。塩味は相変わらずつんとくるんですけど、味わいがやや雑多で、いろんな味が混ざっているんだろうなと。海によって本当に味が違うんだなと実感しました。

 

さらに宗谷の方まで来ると苦みに加えて、えぐみのような風味も感じるようになって、味自体が濃くなってきている印象でした。
実はさっき利尻にも寄ってきたんですが、利尻の海水は逆に、えぐみや苦みがまったくなくて、磯の香りがふわりと漂い、とても柔らかい印象でした。浜の近くだったので、その香りも影響しているのかもしれませんが、とても甘く感じられて、改めて「海によって全然味が違うんだな」と感じました。

 

――小林様
海水の味の違いですか。昆布が多い年は、昆布の養分が海水に溶けているんだと思います。昆布という餌が少ないときのウニは痩せているかもしれません。逆に、昆布がいっぱいある年はウニが柔らかくなる。餌が少ないときはウニが固くなるんです。たくさん食べていると柔らかくなるのかもしれないし、海藻全般、食べるものがなくなると硬くなるんでしょう。ウニは昆布に限らず、いろんな海藻を食べますからね。実際、海水に何が含まれているのかまでは、よくわからない。だから、あんまり海水を飲まないほうがいいですよ(笑)

 

――天野
今のところお腹は壊していません(笑)。礼文島に来てからはまだ飲んでいないので楽しみにしています。

 

ウニの味を決めるのは海藻か、海水か

 

――天野
天たつの「汐うに」も食べていただこうと思いまして持参しました。海の塩を使って練り込み、作っているんです。常温でも10日くらい持ちます。

 

――小林様
(試食して)塩が口に残りますよね。結晶のようで、カリカリして粒っぽく感じる。船泊も昔はそうやって作ってましたけど、需要があまりなくて今はもうやめちゃいました。うちのも常温で保存できるぐらいですよ。塩でサンドして40時間くらい、製法自体は似てるんじゃないですかね。

 

――天野
こちらも塩を直接振って、じわじわ水分を抜いて凝縮させていく方法です。塩を振ると水分が抜けてうま味が凝縮されるので、差がはっきり出るんですよね。身の大きさにも違いがあるようですが、サイズで味が決まる部分もあるんでしょうか?

 

――小林様
身の粒が細かいからかもしれないですね。利尻は赤(メス)と白(オス)で分けて集荷してますしね。塩の違いもあるかもしれない。本地と比べたら、同じ味になるかはわかりませんけど。

 

――天野
海藻が生えてる藻場に、例えば昆布の藻場とか、アマモ(藻場を形成する海藻の種類)が集まってる藻場で獲れるウニは味が違ったりするものでしょうか?どんな海藻を食べているんでしょう?

 

 

 

 

船泊産のウニが美味しいのは
漁師の心意気を乗せているから

 

――小林様
水温が上がりすぎると、何をしてもダメになる。バフンウニは23度ぐらいで死ぬけど、25〜26度でも生き残る個体もある。でもさらに上がったら一気に死ぬかもしれない。秋口は水温が高くなるから、産卵しても定着し切れないかもしれないです。産卵時に大雨が来たら最悪ですね。

 

――天野
温暖化の影響はつらいですね。

 

――小林様
時化(しけ)の時は潜ってもいいけど、見える範囲が限られるからタモじゃないとダメなんです。船だと上から広く見えますから。

 

――天野
これまでのお話ですと、船泊産と香深産の違いはウニのサイズぐらいで、それが味の違いにもなってるんですね。今日召し上がっていただいたのは、実は複数の浜のウニをブレンドして作ったものなんです。浜によって味が違うので、それを重ねて旨みを出してます。でも、船泊産だけの商品も別にご用意していて、産地や背景もちゃんと伝えて販売します。

 

――小林様
上から流れてくる海流、特に北からのリマン海流の影響もあるかもしれませんね。そしてやっぱり一番は、獲ってる人の気持ちです!うちの漁師の気持ちは一番いいと思います!

 

――天野
おっしゃる通りです。温暖化や海流の影響といった自然環境の厳しさの中でも、漁師の皆さんのウニに込める心意気が船泊産の美味しさを支えていると思います。今日はお話してくださり本当にありがとうございました。すごく勉強になりました。

 

2024年3月訪問

 

 

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