味が育つ海、変わる海、香深で出会うバフンウニ|北海道 香深

2025.06.21

-お話を伺った方-
三上 様

 

 


香深バフンウニの深いコク

 

――天野
香深(かふか)産のウニはコクが深いのか、濃厚な栗のような旨みと言いますか。コンソメのような旨みも感じます。独特の旨みがあるんですね。同じこの礼文島で見ても船泊(ふなどまり)産とも味が違う。利尻産とも全然味が違う。この味はなぜ出るのでしょうか?

 

――三上様
私もあまり深くは分からないんです。同じ香深でも獲る場所で味が違うんです。分かるのはオスとメスだということ。要は白(オス)と赤(メス)です。白だけ、赤だけを比べた時に何が違うかと言われても私たちも分かりません。だいたい皆さんがおっしゃるのは「昆布があるからだ」と言うのですが、利尻昆布だと利尻も香深も全部一緒なんですが。

 

――天野
香深産の昆布が基準の浜になっていると聞きました。ここが基本なんだということをお聞きして。香深産の中でも浜によって味が違うそうですが、浜によって1番いいところがあるわけですか?

 

――三上様
明確なところはないんですけれども「西に何か所かいい場所があるよ」とか「東のあの水深何メートルぐらいまでは、いい漁場だ」というのは、漁師のみんなが獲りながら覚えています。結局、どこからウニを獲ってきても、ずっとそこで獲っているわけじゃない。いろんなところから取ってきたのを集めるんです。

 

――天野
ウニも昆布も、漁師さんが「この場所がいい」というポイントがあるのですね。もしご存じであれば教えていただきたいんですけど、他と何が違うのでしょう?

 

――三上様
獲る年度にもよりますね。他と何が違うかも私たちも分からない。とりあえず昆布があった方がいいというのは基本になるんでしょうけども、潮の流れ、海流がよどみになるような湾ではなくて、ある程度は流れがあるところです。でも、場所によってはよどみがあった方がいいところもあるのでなんとも言えないですよね。難しいと思います。

 

――天野
生えてる海藻の影響もありますか?

 

―三上様
若干、西と東で生えている箇所も違うんですけども、だからといって格差があるかっていうとそうでもないんです。人間がどうにかしたというものではなく自然が作るものなんでね。

 

 

塩分濃度と磯の香りが育むウニ

 

――天野
今回、函館から入って車で走ってきたんですけども、その浜で食べるものや海水の味わいで、ウニの味が変わるのではないかと思っています。食べるものが絶対関係あると。そこで私、海水を浜ごとに飲んできたんですよ。やっぱり味が違うんですね。

 

――三上様
ここはだいたい塩分濃度3.12パーセントです。海の水をそのまんま使って煮炊きできるほどで、塩を入れなくても海水で同じ味が出せるという自然の塩の状態なんですよ。うちでは、カニを茹でる時も海水なんです。食塩は一切入れていなくて、海水のみです。

 

――天野
カニを海水で茹でるのですね。では利尻と利尻近海では、海水の濃度は違いますか? これは私自身の味覚の話なので、体調にもよるとは思うんですけど、こちらの海水は塩味が強く感じられたんです。昨日、船泊産の近くで海水を飲んでみたんですが、やっぱりちょっと違いを感じまして。特に船泊産の方が磯の香りが強いように思いました。

 

――三上様
そうですね、当然それは「丘の海水」ってことになりますよね。陸に近い場所というか。浅瀬なのか、それとも少し深みがあるのかでも違ってくると思いますし、昨日は時化(しけ)ていましたからね。昆布も、新しいものだけを選べば良い香りがしますけど、時間が経って傷んでくると、今度は雑味とか嫌な匂いが出てくるんです。礼文島自体は、特に何か工夫しているわけでもなくて、本当に自然の恵みをそのまま利用させてもらっている感じなんです。そういった違いをきちんと調べた人は、たぶん誰もいないんじゃないかなと思います。

 

――天野
バフンウニのサイズについて、香深産と船泊産では少し違うようですね。船泊産では、小さいサイズも獲っていらっしゃると。確かにいただいたウニの身の大きさにも違いがありました。それもあるのかなと思ったんですが、獲り方は同じなんですか? タモ漁でしょうか?

 

――三上様
基本的には同じです。出荷作業も変わらなくて、ほとんどが滅菌海水を使った冷却水で処理しています。家庭でもその滅菌海水を使用して、完全に冷やしてから氷をかけて出荷する形です。作業工程に違いはないんですが、身の大きさに関しては、やっぱり小さくてもバフンウニは美味しいので、大きさはそれほど関係ないのかなとも思いますね。スプーンで食べるか、お箸で食べるかみたいな違いです。または最初にお話したように、オスとメスの違いですね。色で言えば、白よりも赤の方が、やっぱり間違いなく甘みも濃厚さも上なんです。名前をつけると値段がつく、なんて話もありますが(笑)

 

――天野
利尻の方では、白いウニを折り詰め用にして、赤いウニは塩水パックでとおっしゃっていましたよね。

 

―三上様
白は築地向けなんですよ。でも、白だけで固めてしまうと、多分あまり美味しくないという話になってしまうんです。だから、塩漬けにするものは赤と白を混ぜるのが基本なんです。昔の人たちはそれをずっと守っていたらしくて、赤だけ・白だけというのはやらない。
関西圏では、バフンウニよりもムラサキウニを好んで食べているので、結局「赤白込み」で出していく形になるんですね。今でこそ「ムラサキウニだ」って言っていますけど、本来はそういうふうに混ぜて食べるのが一般的でした。ちなみに白い身はオスなんです。オレンジ色の方は、スッキリした甘みがあって、白の方はちょっと濃厚というか、どろっとした甘さがありますね。

 

海もここ数年でずいぶん変わってきました。特に去年くらいからですね。一番分かりやすい説明としては、バフンウニの生息地に「ムラサキウニ」が押し寄せてきた、ということだと思います。バフンウニの個体数が減っている原因は、はっきりとは分かっていません。でもムラサキウニは暖かい水温に強いので、海水温が上がってきていることが一因かもしれませんね。

 

 

 

海流、風力発電、流砂、ウニの生息環境の変化

 

――天野
ぜひ、天たつの「汐うに」を召し上がってみてください。これは特定の産地というより、複数の産地をブレンドしているものなんです。
中には磯の香りが強いバフンウニも入っています。多少苦みが出ることもあるのですが、それがまた深みになるんです。実は、香深産のバフンウニもこのブレンドに使わせていただいています。いろんな産地のウニを重ねることで、味わいも層のように重なって、旨みが増していくんですよね。そうしたブレンドの汐うにを商品として販売しています。

 

――三上様
(試食して)美味しいです。うちでも「板うに」状態のものがありますが、あれだと後から「にがり」がくるんですよ。いわゆる、えぐみっていうやつですね。たいていは塩を強めに効かせると、最初はしょっぱくて、後味が甘くなる感覚になります。余計な雑味があるかどうかの違いなのかもしれません。

 

――天野
ブレンドのものとは別に、香深産だけを使った汐うにも販売させていただいているんです。今日のお話は、商品説明に添えて紹介したいなと思っていまして。浜ごとに味わいが違うという点が、バフンウニの面白さ。塩を振って水分を抜いていくことで、味の違いがよりはっきり出てきます。同じ礼文島でも、船泊産と香深産とでは、やっぱり全然違う。その違いを知りたくて、今日は香深に伺ったんです。

 

 

 

――三上様
たぶん、その違いは「食べ物」にあるんだと思いますよ。岩礁にいるのか、砂地にいるのかで生えるものも変わりますし、育ち方も変わってきます。船泊は、西側が意外と岩場で、東側は砂地が多いと聞いています。岩盤の上に砂がかぶっているような地形ですね。

 

――天野
なるほど。生えている海藻の違いや、海流の影響なんかもあるのかなと考えていたんですが、やはり食べているものに要因があるんですね。

 

――三上様
結局は、海流しかないんですよね。たとえ同じ昆布だとしても、その流れる海流の影響で微妙に状態が変わってくると思います。海もどんどん変わっていきますから、今日お話ししたことも、明日にはまた違っているかもしれません。利尻の地形がちょっと変わるだけで、こちら側の波の入り方も変わりますし、こっちの岸壁が変われば、利尻側も影響を受けると思います。そうやって、島全体が少しずつ変化していくんです。その変化が一番分かりやすいのが「砂」なんですよね。流砂というのは、波によって砂が流されて、その流れが定着すると、岩砂(がんさ)になってしまう。そうなると、そこにはもう何も育たなくなるんです。せいぜいナマコが潜るくらいのものでしょうね。それに加えて、洋上風力発電の設備ですね。ああいった台座の設置場所によっても、湾の形は変わってくると思いますよ。

 

――天野
洋上風力の話は私も耳にします。海流が変わるだけでなく、風の流れにも影響が出るといった話もありますよね。海流や地形、流砂、さらには洋上風力発電といったさまざまな環境要因が、ウニの生息環境や味にまで大きく影響していることを改めて実感しました。今後はそうした背景もお客様に伝えながら、環境への配慮や漁師の努力も含めてウニの魅力を届けていきたいという気持ちを持ちました。お話いただき本当にありがとうございました。

 

2024年3月訪問

 

 

 

 

 

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