山が海を育み、海がウニを育てる、利尻バフンウニの真価|北海道 利尻

2025.06.19

-お話を伺った方-
山上様

 

 

利尻昆布を食べて育つ、甘く締まったバフンウニ

 

――天野
昨年、利尻(りしり)からバフンウニをいただきました。こちらのバフンウニは、とにかく甘みが濃くて、色もオレンジ色で鮮やかに揃っていて、非常に美しい。もちろん、いいバフンウニを厳選して出していただいているのだと思いますが、形もしっかりしていて、まだ身が膨らんでいない、カチッと締まっている感覚です。食べたときの食感もとても良いのですが、これはなぜなのでしょうか?

 

――山上様
それは時期や、バフンウニが何を食べて育っているかによりますね。利尻のバフンウニは、利尻昆布を食べて育っている。それが甘みの源になっていると思います。利尻島の利尻山には昔から雨や雪が降っていて、それが何百年もかけて地盤に染み込み、伏流水として海に流れ出す。その水にはミネラルや栄養分が豊富に含まれていて、海に栄養が行き渡っている。そうした環境で昆布が育ち、それをウニが食べる。だから、バフンウニも美味しくなるというわけです。

 

――天野
つまり、伏流水に含まれる栄養素が、昆布に、そしてバフンウニに凝縮されているということでしょうか?

 

――山上様
伏流水が湧いている場所は、海藻もよく茂っています。それだけミネラル分を多く含んでいるんでしょう。ただ、そういう環境も、年々少なくなってきている気がしますね。水温の上昇も影響していて、水温が23度になるとバフンウニは弱ってしまう。26度にもなると死んでしまうんです。昨年は水温が高かった。今年も一時期は高かったけど、今は平均並みに落ち着いています。

 

 

ウニの品質を支える、漁協の厳格な取り組み

 

――天野
昨年は剥き身で送っていただきました。見た目も味もすばらしく、お客様からの評判もとても良かったです。これだけ評価される理由は、なぜなのでしょうか?

 

――山上様
やはり、昆布がいいからだと思います。ミネラル豊富な昆布を食べて育っているから、バフンウニ自体の味が良いんですね。それと、うちは漁獲の基準を厳しくしていて、資源保護の観点からも、5センチ未満のバフンウニは海に戻している。管理も徹底していて、取り締まりもしっかり行っています。剥き方一つでも品質が変わります。せっかくいいバフンウニがあっても、作業中に崩れてしまっては意味がない。だから「きちんと剥いてください」と指導もしています。そうした取り組みの積み重ねが、見た目や味の違いに表れているんだと思います。

 

――天野
それはすごいですね。資源を守りながら、高品質のバフンウニを提供していくという姿勢に感動します。味も発色も良くて、身もぷりっと締まっている。口に入れた瞬間の食感がすごく良い。それにサイズも揃っていて、均一性が非常に高い。品質のレベルが総じて高いと感じています。やはりその「5センチ未満は戻す」という徹底した管理が影響しているのですね。どうしてここまで違いが出るのか、ずっと気になっていました。

 

――山上様
資源管理を徹底しているからこそ、形も味も良くなるんです。

 

 

熟成で引き出される、もうひとつのウニの旨み

 

――天野
浜ごとに、それぞれの良さがありますよね。船泊(ふなどまり)産は香りがすごく良いですし、香深(かふか)産も美味しい。どれもそれぞれの魅力があるんですが、利尻産のウニの甘みっていうのは、他にはない独特のものがあります。本当に甘いんですよ。隣の島で獲れているのに、なぜここまで味が違うのか、不思議なんです。

 

――山上様
いろんな食べ方があるけど、ちょっと面白い経験があって。以前、バフンウニがあまり獲れなかったとき、お客さんが来てね、仕方なく3〜4日置いたバフンウニを出したんですよ。そうしたら、獲れたて剥きたてよりも「美味しい」と言ってくれた。熟成されていたんだね。
それまで、私はバフンウニが好きだから獲れたらすぐに食べてたんです。冷蔵庫で保管するなんて発想がなかった。でも丁寧に保存しておけば、また違った美味さが出てくるんだなって、60年生きてきて初めて知ったんです、恥ずかしい話だけど(笑)
結局、同じバフンウニでも、獲ってすぐのものと、何か手を加えて食べるというのは、それでも味が違うんだなって実感しました。これは熟成という意味で本当に面白い。

 

――天野
山上さんのバフンウニへの愛情がすごく伝わってきます(笑)

 

 

ウニを育む謎を求めて海水をたどる

 

――天野
実は今回、私は家族と一緒にキャンピングカーで北海道を10日間かけて回ってきました。函館からスタートして、今は稚内、そして利尻に入ったところなんです。今回特に興味を持っていたのが「海水の味」なんです。バフンウニの味には水質も関係するのかなと思っていまして。

 

函館で海水を口に含んだときは、塩気がつんときて、甘みがなく、シンプルな味だなと感じました。室蘭に行くと、そこに香りや甘みが出てきて、日高・襟裳あたりまで行くと、それがさらに濃くなる。その甘みが濃くなってるんですかね。
そしてオホーツクに抜けていくと、今度は苦みが出てくる。オホーツクのあたりではその苦みが強くなり、宗谷に行くと少しえぐみも感じられました。海水の味の濃さが場所によって全く違って、本当に興味深いです。利尻の海水もこれから飲みに行こうと思っていて、すごく楽しみにしています。

 

――山上様
それだけいい環境ってことなんでしょうね。魚も集まってくるし、プランクトンも豊富。雪が多い年は、特にいいって言われますよ。

 

 

海とウニを支える伏流水の恵み

 

――天野
このあたりでは、利尻山以外には高い山があまり見られない印象です。礼文島は比較的なだらかですし。そう考えると、川から流れ出る水も、利尻が多いんでしょうか?

 

――山上様
やっぱり山があると違うと思います。利尻山の影響は大きい。あの山に何百年もかけて染み込んだ水が、伏流水として流れ出てるんだから。だからこそ、利尻の海には良い栄養が巡ってくるし、昆布も育つし、ウニも美味しくなります。山があるのは、本当に大きな違いになっていると思います。

 

――天野
礼文島産と利尻産では、同じ利尻昆布でも、味に違いはあるんでしょうか?

 

――山上様
昆布のプロである福井の昆布屋さんのほうが、そういう違いにとても詳しいと思うよ(笑)。利尻昆布とひとくくりに言っても、実は利尻島の中でも4つの地区があって、それぞれに特徴があるんです。京都の料理人に届けるために、わざわざ地区ごとに買い分けてると聞いたことがあるくらい。実際に入札しても、地区によって単価が違ってくる。やっぱり好みもあるんでしょうね。

 

――天野
ウニが昆布を食べてしまうこともあると思うんですよね。産地によっては、昆布をウニに食べられないように、海辺の手前の昆布場は保護して、ウニは沖の方へやるようなやり方もあると聞きました。利尻ではそういった管理や工夫をされているんでしょうか?

 

――山上様
ありますね。たとえば、沖からバフンウニを持ってきて放流したりもします。身入りのためには時間がかかるので、小さいものを放して、次の年に獲るとか、あるいは一度育ててから放流する方法とか、地区によっていろいろやり方が違います。

 

――天野
それぞれの地区によって、バフンウニの味も違ってきますか?

 

――山上様
味というより「身」の状態が違います。身のいい場所、あまりよくない場所っていうのがはっきりあるんです。また、味よりも、どれだけ丁寧に剥いているか、姿が整っているか、そういうところの差も大きいですね。

 

――天野
面白いですね。地区ごとの海の環境や漁師さんの丁寧さが味や見た目に直結しているということですね

 

――山上様
もっと言えば生息している場所による違いも大きいですよ。海藻があるところで育ったバフンウニと、海藻が全くないような岩場にいるウニとでは、見た目も味も全然違う。海藻の多い場所で育ったバフンウニは、色が綺麗なオレンジ色で、身もしっかりしています。海藻のない場所のウニは色も悪くなるし、身も痩せてくる。色の違いで一発で分かりますね。

 

――天野
私もそう感じています。海藻のない場所で育ったバフンウニは、いろんなものを食べてしまってるからか、色もぼやけて、身も締まりがない印象があります。利尻でもそういうバフンウニが取れてしまうことはあるんですか?

 

――山上様
なるべくそういう場所での漁は避けるようにしてます。もし「今日はウニの質が悪かった」とクレームが入ったら、その夜に情報を流して、すぐ注意喚起するんです。

 

――天野
それだけ品質管理を徹底されているんですね。

 

 

個性を掛け合わせる、ブレンド汐うにの魅力

 

――天野
実は今日は、私どもの「汐うに」を食べていただこうと思って持ってきました。うちは今年で創業220年、私で十一代目になりますが、その汐うにを作ってきました。

 

――山上様
うちでは「板ウニ」と呼んでいたものですね。塩でウニを上下から挟むように漬けたもの。最近は「あの時の塩のウニはないの?」と聞かれることも増えてきました。昔ながらの味がまた求められてるのかもしれませんね。これは塩だけで仕上げていますか?

 

――天野
はい、塩だけで仕上げてるんです。もっとカチッと硬く仕上がってるイメージを持たれることもあるんですけど、これくらいの柔らかさで仕上げるのがうちのスタイルです。実は、今食べていただいたこれはブレンドの汐うになんです。産地ごとに味の特徴が違うので、それぞれの個性を活かして掛け合わせることで、新たな旨みをつくり出すというコンセプトで作っています。

 

もちろん利尻産のバフンウニも使わせていただいています。今は利尻産のバフンウニだけを使った「利尻汐うに」も販売しており、おかげさまで評判もすごくいいです。礼文島の香深産、船泊産のウニを使った商品も出しているんですが、それぞれ味がまったく違うんですよね。特に利尻産のバフンウニは、あの甘みが際立っています。なんでこんなに甘いんだろうと思うくらいです。やっぱり昆布の量が多いからでしょうか? 餌となる昆布の量は、やっぱり利尻島のほうが多いんでしょうか?

 

――山上様
その年によるんですよね。風が強くて昆布が流されたりすると、やっぱり少ない年もありますし。

 

――天野
そうなんですね。山からの伏流水とか、そういう栄養素の影響もあるのかなと思いまして。福井でも、山の水が流れ込んで、海藻がよく育ついい漁場があるんですよ。

 

今年も利尻産のバフンウニを買い付けたいと思ってるんですが、まだ買えてないんです。やっぱり量が少ないんですね。それと、赤っぽいウニ、白っぽいウニ、黄色っぽいウニ、それぞれありますけど、天たつでは特に分けずに使ってます。これは私の勝手な感想ですけど、オスのほうが甘い気がしますね。

 

――山上様
もし欲しいというのであれば、赤と白、混ぜてもいいと言ってもらえるとありがたいんです。赤だけを選んでよけてほしいとなると、手間もかかりますから。混ぜたほうが自然でいいんじゃないかなと思いますね。

 

――天野
当店も混ぜてもらったほうがいいと思ってました。それぞれに良さがあると思うんですよね。赤は赤でコクがあるし、白は上品な甘みがある。それぞれの個性を活かしたいですし、混ざっているからこその味の深みもあります。このあと、海水を味見することも、すごく楽しみです。今日はお話を聞かせてくださりありがとうございました。

 

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