サロマ湖と共に持続可能な漁業のために|北海道 湧別

2025.06.18

-お話を伺った方-
小熊様

 

徹底した選別と分類で磨かれる品質

 

――小熊(おぐま)様
湧別(ゆうべつ)のバフンウニは、オホーツク海ではなく実はサロマ湖で獲れるウニなんです。漁は毎年行われているのですが、昨年は資源減少の兆しが見えて、今年は禁漁になるかもしれないという状況でした。それでも今年はなんとか漁ができました。ただし、水揚げには制限があって湧別・常呂がそれぞれの割合で割り当てられています。私たちはホタテ漁業として、すべて自前でオホーツク海に稚貝を放流し、3年後に漁獲します。湧別沖を4つの区域に分けて「四輪採制」と呼ばれる仕組みで、毎年違う場所で漁を行う。つまり、今年まいた場所は来年は使わず、A海区・B海区・C海区・D海区の4区を1年ごとに漁獲します。

 

――天野
すごい仕組みですね。漁獲量の見通しが立てやすそうです。

 

――小熊様
ただ最近は、異常気象や台風で状況が厳しくなっています。もし全部の区域がやられてしまったら、4年間はホタテが獲れないリスクもあるんです。北海道全体としては、稚貝が獲れないとホタテ漁ができないという課題がありますが、サロマ湖でも稚貝が獲れるので、ある程度まかなえているのが強みです。稚貝の放流作業期間は漁師全員が総出で取り組むので、すべての漁業が沖止めになります。

 

私たち湧別のウニが「良い」と言われるのは、やはり選別がしっかりしているからだと思います。例えば、黄色のA品、黄色のB品、赤のA品、赤のB品、さらにはC品やフレーク状のF品まで、すべて分けています。B品は、白っぽい部分が見えているものなども含めて丁寧に選別しています。

 

――天野
天たつの「汐うに」もぜひ味わっていただきたくて持参しました。これは練りうにですが、塩を振って水分を抜いたもので、水分は少なく、少しねっとりした食感になっています。塩味がしっかりしつつ、旨味が詰まった仕上がりです。

 

――小熊様
すごく美味しいですね、風味も良くて。磯の香りが強いですよね。

 

――天野
ありがとうございます。福井の浜はもともと磯が多くて、「汐うに」といえばこういう磯の香りの強いものなんです。ご飯に乗せたり、お酒のつまみにしたりする食べ方が一般的です。ただ、これはブレンドして香りをマイルドに調整しています。産地ごとにウニの味が違うので、それをうまく合わせて旨みを引き出しています。

 

――小熊様
これはバフンウニだけを使っているんですか?

 

――天野
はい、バフンウニだけです。本当にその地域ごとの名前や歴史も伝えながら販売しているんですよ。実は以前、湧別産のウニを2パックいただいたことがありまして、それがとても美味しかったんです。コクがあって、クリーミーで。香りも特徴的で、マイルドな磯の香りがある一方で、どちらかというと「こってりとしたコク」が印象的でした。甘みもやさしくて、本当においしい栗を食べているような感覚でした。

 

――小熊様
それはうれしいですね。

 

 

「山を買って、海を守る」水の源から育む湧別の漁業

 

――天野
産地によってウニの味は本当に違うなと感じています。食べているものや海水の質も関係しているのではないでしょうか。実は、私は函館から道中、各地の海水を味見しながら来たんですよ(笑)。そうしたら味が違うんですよ。

 

函館の海水は結構塩が辛くて。海の水自体の味は塩が強くくるような感じだったんですけど、噴火湾ではそれほど変化を感じませんでした。苫小牧から日高へ向かう途中では、海水に香りや甘みが感じられるようになって、襟裳ではさらに香りと旨みが際立ってきました。今日来る途中の釧路では、その根室の手前の釧路辺りで飲んだら、甘みがぐっと増えててですね。

 

――小熊様
社長、面白い人ですね(笑)

 

――天野
今回は、それと同時に、ウニの味の違いの理由を知りたいという目的もあります。

 

――小熊様
それを言うなら水でしょうか。サロマ湖は本当に水質が良いんです。私たちは湖の周りに植樹も行っています。海を守るには、まず水を守ること。そのために、針葉樹ではなく広葉樹を植えています。広葉樹の葉は土壌に栄養を与え、良い水を生み出します。私たちは山を購入して、山林として管理しています。つまり、私たちはその水を守るために山を買ったんですよ。

 

サロマ湖は本当に恵まれた場所で、稚貝、牡蠣、ウニ、ホタテ、さらにはカレイ、サケ、マス、北海シマエビ・ニシンまで獲れます。今はカレイの時期で、日によっては1トンの水揚げがあります。これは、漁業資源が安定している証拠です。それはなぜかというと、稚貝を育てる、カキを育てる、ホタテ養殖を育てる、養殖施設の存在が産卵場として機能しているからです。なによりも資源に対して「許容量」を厳しく定めているからです。例えば「ホタテはこれだけしか育ててはいけません」と明確に決めている。プランクトンなどの餌とのバランスを守るためですね。

 

――天野
素晴らしいですね。作れるだけ作るという方針では、餌不足になってしまいますから…。

 

――小熊様
そのとおりです。資源を無理に増やすと個体にばらつきが出て、変形も増える。海のバランスが崩れます。私たちは、すべての養殖施設をチェックしています。違反があれば罰金も課されます。ホタテ1枚多くてもアウトです。それだけ徹底しているのは、私たちが稚貝の育成を担っているから。全員が責任を持っています。

 

牡蠣に関しても、ノロウイルスを発生させたことがありません。北海道大学の研究者も「なぜここはこんなに水が良いのか」と調べに来たことがありました。山の栄養が川を通して湖に届き、それが海に流れ、そこに命が育まれている。だからこそ、私たちは川にもたくさんの予算を投じて保全しています。それは先祖代々、大切に引き継いできた考え方です。栄養の源は山から、そして川を伝っていくということでものすごく川を大事にしている。それが先祖代々引き継がれて今があるんです。

 

――天野
素晴らしい。

 

――小熊様
湧別はそういうところなんです。ホタテに関して言えば、稚貝から成貝までを一貫して自前でやっているのは、私たちだけだと思います。周辺の産地は他地域で育てた稚貝を持ち込んでいますが、湧別は全て地元産。他の地域にも販売供給しています。自分もサロマ湖ってすごいなと思っています。

 

――天野
あるべき姿ですね。利益を守るために制限をかける。それを厳格にやらないと絶対好きにやり始めてしまうから、役目があると思います。ちゃんと決めて、抜き打ちチェックまでしている。だからずっと豊かなサロマ湖があるんだろうと思いますし、品質も保てますしね。

 

――小熊様
さらに言いますと塩分濃度計や水温計を各所に設置しています。稚貝は真水に弱いので、塩分濃度が下がっているときは作業を中止します。稚貝のために年に何回も作業するんですよ。入れ替えしたり選別したり、大きい株に入れ替えたりという作業があるんですけど、そういうのもしっかりと役割分担をして、例えば、表層の海水温が23.5度を超えると稚貝の作業は中止となります。すべてしっかり役割分担して呼びかけます。

 

――天野
徹底した管理が今の漁業を支えているのですね。だから美味しいと感じるのだと思います。

 

湧別のウニが育つ環境と人の力

 

――天野
ところで、サロマ湖の中でも、身入りが良い場所と悪い場所があるという話を聞きました。

 

――小熊様
ありますね。身入りの悪い場所には移植も行います。川がある場所では栄養が多くて身が入りやすい。何かしらの海藻を食べているのだと思います。大きな川の近くに放流すると、牡蠣もホタテもウニも育ちが良いです。牡蠣は特にそうですね。水と一緒に流れ込む養分が影響して身が一気に太ります。ホタテは真水が多すぎると死んでしまいますが、牡蠣は逆に成長します。

 

――天野
最近、いろんな産地で「ウニが獲れなくなっている」と聞きます。原因は海水温の上昇で温かい海水を嫌うウニが深場や別の地域に移動してしまう。海藻が育たなくなる地域も多いです。サロマ湖でも、海藻の減少は見られますか?

 

――小熊様
今のところ、そのような兆候はありませんね。

 

――天野
昨日は私と家族でキャンプ場で泊まったんですけどサロマ湖の水が非常に冷たかったのを覚えています。湖に流れ込む水の温度が低いことで、サロマ湖全体の水温も低く保たれているのかもしれません。

 

――小熊様
塩分濃度は3%程度ですね。水温は外海と比べて若干高い場合もありますが、塩分濃度は低めかもしれません。地域全体でサロマ湖を大切にしているんです。よそから企業が入ってきて伐採されると自然が壊れてしまいますから、私たちは毎年1000本以上の植林を続けています。良い海を保つには、まず山を守らなければいけません。浜の人たちの協力があってこそ、私たちもやってこれました。だからこそ「浜のために何かしたい」と思えるし、何かあれば、浜の仲間が助けてくれる。そういった強い信頼関係が、私たちの財産だと思っています。

 

――天野
本当に広い視野で漁業を運営していますね。稚貝の自給も自前での供給も含め余剰があれば他地域にも販売している。理想的な姿だと思っています。本当にありがとうございました。今日のお話で湧別のウニが美味しい理由がよく分かりました。

 

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