ウニの価値観、いま再評価の時代へ | 北海道 根室

2025.06.17

-お話を伺った方-
髙橋 様

 

 

プロが選ぶのは赤か黄色か、ピンクか
ウニの価値観、いま再評価の時代へ

 

――天野
地域によってバフンウニの味が違うな、ということをすごく感じているんです。食べているものなのか、それとも海水の塩分の関係なのか、何が影響しているのでしょう?

 

――髙橋様
一番大きいのは食べているものですね。特に海藻の種類によって味も色も変わります。根室(ねむろ)では基本的に昆布を食べています。北方四島も同じですね。

 

――天野
バフンウニの味は、ウニが食べているものによるのでしょうか?

 

――髙橋様
そうですね、それ以外に考えられないです。黄色とか赤、ピンク、薄い赤、濃い赤、茶色っぽいものや、黄土色のような色もあります。種類はたくさんあるんですよ。人間と同じでバフンウニもその地域にある海藻や食べ物によって体の色や状態が変わる。バフンウニにしてみれば、そこの地域に定着している海藻そのものでその色になってしまうとか。

 

――天野
人もミカンばかり食べると肌が黄色くなったりしますしね(笑)

 

――髙橋様
そうそう。バフンウニもバナナを食べれば黄色くなるし、キャベツとか青物を食べれば青くなるでしょう(笑)。

 

――天野
色が黒っぽくなると、B級品・C級品と言われて、質も落ちる、値段も下がると聞きますが、逆に色が濃いほうが味が濃く、そして値段も上がるのではと思うんです。

 

――髙橋様
極端に茶色とか、灰色をしたウニは、食べてるものが良くないから美味しくないと思います。でも黄土色くらいだったら、そこまで悪くないこともあります。黄色や赤、ピンクのきれいなウニは、いい海藻を食べているんです。だから味もいい。いろんなワカメを食べたり、いい海藻を食べてるからそれなりの色になって味もいいっていう感じですよね。

 

黄色が美味しいとか、赤が美味しいとか、それは結局人それぞれの感覚なんですよね。見た目の印象で「ウニは黄色」って思い込んでるから、黄色のほうが美味しいと感じる。でも実際は、僕らプロが食べるのはピンクとか赤なんです。

 

――天野
視覚からの情報は大きいですからね。色の固定観念があると、違う味に出会った時に「これは違う」って感じてしまうんでしょうかね。食べ比べてみれば、明らかに違うんですけどね。ピンクなんて特に希少で、量も少ないじゃないですか。最近では「ピンクは希少価値が高い」といった話も、少しずつ耳にするようになってきてるような気はします。

 

――髙橋様
ピンクはやっぱり一番美味しいですよ。いいとこ取りって感じです。だから私たちも、選別して工場で洗う時にピンクのものだけを集めて、それだけで製品を作ってます。上級品として詰めていますね。

 

 

バフンウニとムラサキウニの生存をかけた戦い

 

――天野
根室の前浜で獲れるウニについて、教えていただきたいんですが、先ほどお話に出た長昆布や羅臼昆布を食べているということでしたが、基本的にはバフンウニは昆布が主に餌なんでしょうか? 最近は、いろんなものを食べてるとも聞きますが。

 

――髙橋様
根室では、基本的に昆布を食べてます。だから美味しいんです。バフンウニが獲れる地域はほとんど昆布ですね。利尻もそうです。道南のほうになると天然の昆布は少ないんですが、あちらでは早期養殖の昆布を作っていて、そこにバフンウニを放して育てたりしています。

 

――天野社長
実は今回、函館のほうから沿岸をずっと見てきたんですけど、採れる昆布の種類も違いますし、海水の水質も味わいに関係しているのではないかと感じました。

 

――髙橋様
関係ありますね。今獲れている利尻のほうは、夏でも海水温が低いんです。バフンウニはあったかくなると死んじゃうんですよ。だから北海道のバフンウニが一番美味しいのは水が冷たい時期。水温が上がりすぎると、白っぽくなって死んでしまうんです。

 

――天野
だから、秋から冬にかけてが旬なんですね。

 

――髙橋様
夏になるとバフンウニは深いところに移動します。ムラサキウニが幅をきかせてきて、バフンウニを襲うんですよ。だからバフンウニは逃げざるを得ない。でも、あんまり深くて水が冷たすぎると、今度は餌がない。

 

――天野社長
なるほど、海藻があるところじゃないと餌になりませんもんね。

 

――髙橋様
そうなんです。今この地域でもムラサキウニが増えてきた影響で、バフンウニの居場所がどんどん狭くなってきています。冬になって寒くなるとムラサキウニの活動が鈍くなるので、バフンウニが増えてきます。一般的に、バフンウニは稚貝から育てて大きくなるまで3年かかると言われてます。天然の場合は養殖とは違うんだけど、1年ごとの繰り返しの中で、天然でもある程度の予測はつく感じですね。

 

――天野
ちなみに、今年の見通しはどうですか?

 

――髙橋様
去年は比較的よく獲れたから、今年はちょっと厳しいかもしれませんね。一昨年は全然ダメで、原料もなかなか渡せない状況だったじゃないですか。「頼まれても出せない」ってことがありました。

 

北方四島と根室、バフンウニの角に見る味の違い

 

――天野
根室のバフンウニについて、味の特徴を教えていただけますか? 

 

――髙橋様
正直に言えば、根室よりも北方四島のバフンウニのほうが美味しいんです。北方四島のほうが昆布が豊富で、ロシアの人は昆布を食べないから採らない。つまり、自然のままの環境が保たれていて、バフンウニの餌もたくさんある。それに比べて根室近海のバフンウニは、味にバラつきが出るんです。柔らかかったり、最近は特に苦みが強くて。北方四島の海は水温も低いままで安定しているから、日本で一番美味しいバフンウニだと、私も市場の人も思っています。

 

――天野
では、北方四島のバフンウニには、どんな味の特徴がありますか?

 

――髙橋様
北方四島のバフンウニには“角がない”。根室近海のバフンウニって、極端に言うと“角がある”んです。苦みが強かったり、口当たりが悪かったり。でも北方四島のバフンウニにはそれがない。滑らかで、塩味のバランスもいい。“角がない”って感じですね。粒も違って、北方四島は小さめで細かい。

天野社長のように、昔からいいものを作ってきた方なら、ロシア産、根室産、国内産など産地にこだわらず作った方が、もっと美味しいものができるんじゃないかなと思うんです。

 

 

北方四島産ウニに込める日本人の誇り

 

――天野
この北方四島で獲れるウニを使うというのは、単なる食材としてだけでなく、大きな意味がありますね。

 

――髙橋様
もともとは日本の領土であり、日本人が住んで大切にしてきた場所です。それを忘れないためにも「北方領土は日本のものだ」という意識で食べてもらうと、日本人が島を放棄したんじゃないよっていうのを、みんなで共有してもらえる。「ロシア産でしょ」と一言で片付けてしまえば、「北方四島はもうロシアのものなんだ」と受け取られてしまう。私たちが「北方四島のウニだ」と認識し、そう伝えていくことは、日本人としての大切な姿勢だと思っています。

 

――天野
先ほど髙橋さんがおっしゃった「我々にしたら根室近海だ」という言葉、本当にその通りですね。地理的にも、文化的にも、まさに日本の一部です。

 

――髙橋様
昆布なんかもそうですよ。お金を払って、ロシアの船で採りに行くんですけど、小さな船ですぐ着く距離なんです。30分もかからないくらい。ロシアの船で行くとはいえ、船も人もインポーターが用意して、日本側が指示して採ってきてもらっているんです。

 

――天野
ぜひ、私たちもその背景を発信していきたいです。そうなると、北方四島のウニも商品として扱っていきたいですね。

 

――髙橋様
広めていただけたらうれしいですし、そんな素晴らしい汐うにを作っていただけたら、もっとうれしいです。

 

 

ウニ好きでも好みが分かれる磯の香り

 

――天野
天たつの「汐うに」を召し上がってくださいますか? 水分を抜いて、ねっちょりした食感のタイプです。

 

――髙橋様
うん、すごい磯の香りだね。

 

――天野
ブレンドなんです。いただいたバフンウニも使わせていただいてます。この北方四島のバフンウニも、味を見ながらベストな汐うにに仕上げていきたいですね。

 

――髙橋様
磯の香りが強くて苦手っていう人もいるんですよね。特に東京の人は、ウニの磯の香りがダメっていう人が多くて、あんまり好まれない。だから売れにくいんです。ウニが嫌いっていう人と好きな人の違いって、磯の香りがするかしないかのようです。

 

――天野
なるほど。ウニが好きな人の中でも、磯の香りが「好き」の中でさらに好みが分かれるってことですね?

 

――髙橋様
そう、分かれるんですよ。ウニ嫌いな人は、その香り自体がもうダメ。でも、ウニ好きの中でも、磯の香りが“たまらない”っていう人と苦手な人がいます。磯の香りで好みがはっきり分かれるところです。

 

――天野
面白いですね。今のお話を聞いていて、磯の香りを抑えたタイプの汐うに、ぜひ作ってみたいと思いました。もともと、天たつの汐うには塩気が強くて、香りも福井のウニを使っているので磯の香りがしっかり出るんですよ。ただ、食べてみるとそれが落ち着いて、旨みに変わるんです。昔ながらの汐うにはもっと塩辛くて、カチカチの状態でした。でも今のお話を伺って、磯の香りを抑えた汐うにもぜひ挑戦してみたいと思いました。福井の昔ながらのスタイルはもちろん残しつつ、新しいタイプも作ってみたいですね。

 

――髙橋様
そうですね。香りが苦手な人でも食べられる。そういう汐うにがあってもいいと思うんです。「あ、こういう感じもあるんだ」っていう気づきになりますよ。

 

――天野
寿司に合わせた時のイメージが、今、すごく湧いてきました。ウニが好きな人の中でも、「磯の香りがいい」という人と「香りがないほうがいい」という人に分かれるというのは、ほんと興味深いですね

 

――髙橋様
そうなんです。特に嫌いな人は、あの匂いでダメだっていう人がけっこう多い。あと、ミョウバンを使ってると、まったく受けつけないっていう人もいますし。

 

――天野
従来の天たつの汐うには、磯の香りをしっかり出してきましたが、これからは香りを抑えた新しいタイプの汐うににも挑戦してみたいという意欲が湧きました。寿司に合わせるイメージも膨らみ、福井の伝統的なスタイルは守りつつ、より多くの人に楽しんでもらえる新しい味作りに挑戦したいです。今日は実りあるお話、ありがとうございました。

 

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