ウニとカニとえりもの海 赤潮を越えた漁業の現在地|北海道 えりも

2025.06.16

-お話を伺った方-
金子様

 

 

赤潮後、海の再生のためにしていること

 

――金子様
来年の年明けには、わずかに販売できるバフンウニもあるかもしれません。ただ、従来のように安定してバフンウニが生産できるようになるまでは、まだ2~3年はかかると思っています。

 

――天野
そうですか、現状、襟裳(えりも)周辺のバフンウニの生産について教えてください。2021年に起きた赤潮の影響はいかがでしたか?

 

――金子様
この辺りではバフンウニだけではなく、ツブ貝の生産も盛んに行われていましたが、赤潮の影響でウニもツブ貝も全滅してしまいました。翌年の2022年には、他の地域から大型のツブ貝を仕入れてそれを放流しました。でも、以前のように回復するのは10年単位でかかるのではと思っています。ツブ貝はウニとは違って、陸上で人工的に種を作る技術がないんです。
ただ、最近はオオズワイガニが獲れるようになって、それに助けられています。去年はとても小さかったのですが、1年たって少し大きくなってきました。毛ガニよりも成長が早いようで、年に2~3回脱皮し、そのたびに大きくなるんです。来年にはさらに大きく育って、販売につながればと期待しています。

 

――天野
ウニも戻って、ズワイガニも残る。それが理想ですね。

 

――金子様
理想だけど、そんなにうまくはいかないですよ(苦笑)。世界中どこでもそうだと思うけど、高水温は確実に何かしらの異変を起こしています。

 

――天野
やはり、この辺りの海水温も変化しているんですね。2022年から稚ウニの放流を始めて、少しずつ育っているとのことですが、ある程度成長してきているのでしょうか?

 

――金子様
調査では、順調に大きく育っている場所もあるとのことです。ただ、年明けにどの程度水揚げできるかは不透明で、今年の秋に方針を協議する予定です。あまり獲りすぎると、自分たちの首を絞めることになりますから。判断が難しいところです。

 

 

襟裳の日高昆布を食べて育つウニ

――天野
以前、バフンウニの育成場を見学させていただきました。1センチほどまで育てて放流するという話でしたね。その時、私が感動したのは、海水を汲み上げてかけ流ししているだけで藻が生え、ウニがそれを食べて育つことです。「なんて栄養豊富な海なんだ!」と驚きました。この辺りのウニは、やはり昆布を主に食べているんですか?

 

――金子様
主に昆布でしょうけど、バフンウニは雑食なので何でも食べますよ。

 

――天野
わさっと昆布が茂っている場所にバフンウニが棲みついていて、そこから剥がして収穫するようなイメージを持っていますが、こちらではどのようにバフンウニを獲っているのですか?

 

――金子様
昔は干潮の時にスーツを着て、水中眼鏡をかけて浜から入って手で獲っていました。でもバフンウニは昆布を食べてしまうので、昆布に影響が出ないような場所にバフンウニ場を設け、潜水で収穫するようにしました。昆布や海藻が繁茂する場所を選んで、そこにバフンウニを育てる場所を作っています。

今は8〜9割がた、潜水による収穫です。獲ったバフンウニは規定サイズに満たないものを漁師が選別して、小さなバフンウニはダイバーが再び海に戻します。昆布採りの人もウニ漁の人もほぼ同じなので、双方にとって良い方法にしています。

 

――天野
潜水で人が選んで獲り、小さいものは海に戻すという話を聞いて納得しました。「天たつ」で扱ってきた襟裳産のウニは、粒がしっかりしていて、身が大きくて溶けにくいんです。加工する側としては歩留まりも良く、甘みがあって食べ応えもあります。なるほど、品質が高いのは、そのように丁寧に扱っているからなのだと分かりました。

 

――金子様
やっぱり身が良いのは餌のおかげです。昆布を食べて育つと甘みが出ます。一方で、生の魚を食べたバフンウニは生臭くて甘みがないんです。ここらの漁師は、いろんなことを試していますよ。

 

――天野
そうなんですね。昆布は沿岸の浅瀬で採っている印象ですが、沖の方にも海藻が生えているんですね。

 

塩分濃度による海水の違い

――天野
浜ごとにバフンウニの味がまったく違うのが不思議で、その理由を探りたくて今回訪ねてきたんです。食べ物や海水がウニの味に影響しているのではないかと。実は、函館から走ってきて、途中の海水を飲んできたんです。函館、内浦湾(噴火湾)、八雲、室蘭、日高、そして襟裳で。海水の味が地域ごとに違うんですよ。

 

――金子様
地域によって塩分濃度の違いはあるようですね。しょっぱい、塩辛いといった違いです。今年は昆布が少ないから、バフンウニもあまり獲れないかもしれません。

 

――天野
昆布が少ない…、途中の浜では、海面が昆布で盛り上がっているように見えたのですが…。

 

――金子様
北海道の海でもバフンウニが少なくなってしまって、価格が非常に高騰しています。本当に恐ろしいくらいの値段です。もともと20年前に「地元で獲れるウニを剥き身でもやってみようか」ということで取り組みが始まりました。地元でもウニ祭りを開催したり、ブランド名をつけて販促活動を行ったりして、徐々に価値がつくようになってきましたが、「さあ、これから」というときに赤潮が来て全滅してしまったので、そのショックは大きかったです。すべて海に打ち上がってしまいましたし、打ち上がらなかったものも海の中で真っ白になってしまいました。

 

――天野
本当に、自然の怖さを感じますね……。

 

――金子様
バフンウニは、やはり弱いんですよね。全滅してしまいました。先ほど話したツブ貝は深いところに生息しているので大丈夫だろうと思っていたのですが、そうではありませんでした。襟裳岬周辺は特に被害が大きかったです。ですから、最初にお話ししたオオズワイガニが獲れなかったら、廃業する人が増えていたと思います。

 

――天野
オオズワイガニがずっと襟裳で獲れるようになって、名物になって「ここに来ればウニもオオズワイガニも食べられる」となったら素晴らしいですよね。

 

 

あのウニの味が忘れられない
天野社長の記憶にあるウニ

――天野
「天たつ」では、赤潮が来る前からお取引をさせていただいて、もう10年ほどになります。獲れはじめのウニは粒が小さめですが、味が違うんです。やはり時期によって味が変わるものなのでしょうか?

 

――金子様
変わるかもしれませんね。身がしっかりと締まっているのは早い時期のものです。そこから粒が大きくなってきて、産卵期が近づくと溶けてくるようになります。襟裳の辺りでは、産卵間近のウニは、もう身がパンパンに膨らんで一番良い状態かもしれません。

 

――天野
最初にお取引させていただいたときのバフンウニの味が忘れられないんです。獲れはじめの粒は少し小さめでしたが、オレンジ色がとても鮮やかで、なんとも言えない甘さがありました。「天たつ」では、「干うに」という商品がありますが、襟裳のウニで作ると本当に絶品でした。時化(しけ)が多いと、なかなか獲れないと伺っていましたが、「もしウニが入れば、いつでも!」とお願いしたことを覚えています。本当に忘れられない味でした。あの時にいただいたウニをまた食べられる日を楽しみにしていますし、ウニが早く浜に戻ってきてほしいと願っています。
お話、ありがとうございました。

 

2024年3月訪問

 

 

お知らせ