-お話を伺った方-
吉川 様
殻付きで出荷するバフンウニ
質を見て競りにかけられる
――天野
日高では、潜水で獲る方はどれくらいいらっしゃるのですか?
――吉川様
日高は2地区あるんですけど、1地区15人ずつくらいでしょうか。私たちは潮が引いた時期に合わせて潜水で獲っています。4月から通して潜水するのではなく、潮回りのいいとき、ちょうど凪なら獲るスタイルです。
――天野
15人で行っているのですね。日高地区の年間数量の水揚げはどれくらいですか?
――吉川様
1日に揚がる量は、地区でだいたい600キログラムくらいですね。殻付きのウニです。ただ取りこぼした分をあとから拾いに行くこともあるので、最終的な数量は少しずつ減って、最も多いときでもそれくらいという感覚です。今年は、4回くらいしか採取していない、つまり3カ月間で4日間しか出てないんですよ。最初にサンプルを取って身入りを確認したうえで、「まだ早いね」となって時期を遅らせて獲ることにしました。
――天野
出荷は殻付きのままですか? 加工などはされていないんでしょうか?
――吉川様
はい、工場がないので殻付きでの出荷になります。以前、春ウニがちょっとブームになったことがあって、そのときは地元の数店舗でウニ丼をゴールデンウィークに出すために、殻を剥いてくれる業者もいました。
――天野
今日は、実際に商品と味を見ていただきたくて弊社の「汐うに」を持参しました。バフンウニに塩を振って練り込んで作っています。
――吉川様
(うにを試食して)おー、うまいね。
――天野
ありがとうございます。私は十一代目になるんですが、うちの三代目がこの「汐うに」を考案しました。もともとは戦時中の保存食として作られていたんですが、今では贈答用やお酒のおつまみとして召し上がっていただくことが多くなっています。
――吉川様
私たちもたまに剥いたウニを試食しますけど、食べて比べるということはあまりないです。でも、ウニがおいしくないということはほとんどないですね。ミョウバンなどを使った加工については、どうされていますか?
――天野
ミョウバンを使うと、塩を使って水分を抜くと、バフンウニの旨味が凝縮しますが、同時にミョウバンの味も強く出てしまうんです。だからミョウバンは使ってはいないんです。

昆布があるからウニがうまい
――吉川様
去年は赤潮の影響でウニ漁も不振で、あまりいい状況じゃなかった時もありました。でも、日高はそこまで被害が大きくなかったんです。なんとか復活しました。
――天野
以前からずっと日高のバフンウニを扱いたいと思っていたんです。今回、どうしてもお伺いしたくて参りました。浜に近い岸にも昆布はあって、とても豊かな海ですね。
――吉川様
海がきれいで、昆布が魚を呼び、自然とバフンウニも育つ。やっぱり美味しいウニだと言われるのは昆布が育つところだからでしょう。昆布漁をする業者さんはバフンウニも獲ります。でも昆布にも影響があるから、どちらを優先するかという話にもなるんです。昔は岩盤を崩して、バフンウニのためだけの造成をすることもしていました。この辺は潮が引いたらそういう地形が見えるんですよ。なるべく昆布に影響が出ないよう、昔の人たちも工夫していたんです。
なぜ浅瀬の「丘のほう」がいいのかというと、水深が浅いと太陽の光が届くから。光がないと昆布が育たずバフンウニも育たないんです。海の底にもたまにウニはいますが、それは海が澄んでいて、光が届くから育っているんでしょう。岩場や岸の波打ち際にいることが多いですね。
ただ、今年(2024年)のウニ漁は厳しそうです。8月に入ってから異常気象で…。昔、この地域でこんな気温は考えられなかったですよ。日高の夏でも25〜26度で「暑いな!」って感じだったのに。ここ2〜3年で昆布が根腐れして抜けちゃって。岩について育てばいいんですが、1年では間に合わない。今年はついに一度も漁をしませんでした。
でも、餌になる程度のワカメのような昆布をウニは食べるので、それなりに身入りはありました。しかし昆布がダメとなると、バフンウニも連鎖的にダメになるかもしれません。暑さに耐えられても、餌がなくなれば厳しいですから。
――天野
異常気象は海の漁にも大きく影響しますものね。苫小牧(とまこまい)の辺りは砂場じゃないですか。ここは獲れないだろうなと思いながら車を運転してきたら、途中からだんだん岩になってきました。
――吉川様
ええ、このあたりは岩礁地帯なんです。そこでウニを獲るんですよ。かごを背負って降りて行って、潜ってる間は浮かせて、人間が陸上に上がってきたら、背負いかごに開けて、という獲り方ですね。昔ながらです。サイズもちゃんと見て、資源保護もしながら獲っています。
――天野
サイズを見るというのも、美味しさや品質の良さにつながっていそうですね。
――吉川様
そうなんです。時期が遅くなってくるとウニから液体が出てくるんで、そうなる前に終漁します。なるべく水温が低くて、暑くない時期を狙っています。
――天野
私も運転しながら海を見てたんですけど、苫小牧の辺りは濁ってるんですよね。でも、こちらに来るにつれて、海の色がどんどん青く変わっていきました。
――吉川様
苫小牧のような大きな川があると、大雨が降った時に土砂も一緒に流れてしまって、川の近くの海は濁ってしまうんです。上流からの堆積物がたまっていて、波が立つと水の色が悪くなります。でも日高沿岸は小さな川しかないので、土砂の流出も少なくて、海がきれいなんですよね。昆布も海の透明度が低いと育ちにくいっていうのもあります。
――天野
水がきれいだと光も入りやすいので昆布がよく育つ。それが美味しいウニにつながっているということでしょうか?
――吉川様
やっぱり昆布ですね。「自分のところの浜で獲れたウニが一番おいしいよ!」とみんな言うと思います。もちろん潮の流れなんかも影響しているとは思いますけど。
例えば北海道で獲れる鮭だと、道東や日高沖のほうが美味しいと言われることが多いです。苫小牧や胆振(いぶり)方面の川が大きくなるにつれて、魚の色も悪くなってきたりするんですよね。魚が年を取っていくみたいな感じで。日高の鮭はギラギラ光っているけど、向こうは色がくすんできたり、筋が入ってきたり、脂のノリも落ちてくる。ここらの魚が脂のノリが一番いいと、みんな言いますね。
バフンウニに関しても、小樽などに行って食べたりもしますが、特に味がいいです。日本海側は7月に旬になりますが、こちらは6月から8月にかけてです。観光客もすごく多くて、地元の割烹料理屋で「宝石ウニ丼」という60グラムで6000円もする丼が行列になるほど。みんな「一度食べてみたい」と言って並ぶんです。旅行の目的にもなっていますよ。

味の違いは海から来る?産地の個性を探る
――天野
天たつの汐うには、味を見ながら合わせて作っていますが、産地別の味の違いはやはりあります。まずは日高産の美味しいバフンウニを使って製品を作りたいと思っていて「これは日高産です」とはっきり言って紹介していきたいです。福井では、バフンウニはほとんど獲れないんです。ごく少量しか獲れません。
――吉川様
製法がしっかりしていれば、どこで作ったものでもおいしくなるとは思うけど、地元産でないと寂しいですよね。昔は地元から始まったのにね。
――天野
本当に。しかしそのおかげで、仕入れを全国からとなった時に、産地ごとの味の違いが分かるようになりました。合わせることで旨味が増していく。産地の味わいの良さを伝えていくことは、お客さんにも喜んでもらえるんじゃないかなと。
――吉川様
おいしいバフンウニをただ食べるだけじゃなくて、製法が良いものと合わさると全然違う、もっと良いものになるんでしょうね。
――天野
その「味の違い」がなぜ起きるのか、とても興味があります。バフンウニが食べているものと、海水の質が影響していると思っています。今回は函館の海水から味見をしてきました。函館、噴火湾、室蘭と順に試しましたが、やはり味が変わってきます。
函館の海水は味が淡白で、塩気が少し強く感じられ、さっぱりとした印象です。噴火湾はあまり変わりがありませんでしたが、室蘭まで来ると味が濃くなってきて、磯の香りも強くなって、はっきり違いを感じました。実はこのあと日高の海水も飲んでみたいと思っているんです。バフンウニの味にどれくらい影響があるのか、確かめてみたいですね。

浜に還元する仕組みづくり
――吉川様
全国にはいろんな漁業者や海女さんがいます。年配の方も潜ってるんですよね。年齢が上がると体力的にきついのは確かですが、ウニ漁が終わったら昆布採り、時期によっては沖に出てタコ漁の船に乗るなどいろんな仕事をしています。ウニ漁は合間の仕事なので、「辞める」ということはあまりなくて、元気さえあれば、バフンウニさえいれば続けてくれる人が多いです。収入はあったほうがいいですからね。獲れる量があって、価格も良ければ言うことないです。
――天野
福井では獲れる量が少なくなってしまっているので、儲からないから後継者もいない。海女さんも高齢化も進んでいて、「もう続けられるかどうか」という状態ですよね。収入源の確保は大切です。
――吉川様
バフンウニに期待しているんですが、赤潮でダメになって漁獲量が減ってしまって。今は回復傾向にあるので、多少は期待しています。最初の漁が始まれば、ある程度の収穫があるかもしれません。
私たちも商売で、相手も商売ですが、「この値段で買います」と言ってくれる業者さんがいれば、その分を浜の人たちにも還元してあげたいという思いがあります。自分たちだけが利益を取るんじゃなくて、1円でも10円でも浜の単価が上がるようにしたい。
――天野
漁業者や浜が元気でいられるよう、自分たちも協力していきたいと思っています。お話いただき、ありがとうございました。
2024年3月訪問



