地酒と伝統食が価値を高め、人と町を支えて未来へ向かう
福井の米・水・人にこだわる
──天野
私どもは、いわゆる酒の肴に代表されるような「汐うに」を製造しています。弊社の汐うには日本酒の女房役と思っているのですが、常山さんのお酒は相当相性がよいと思っています。この度は素晴らしい賞を取られたそうで、おめでとうございます。
──常山酒造様
ありがとうございます。こちらのお酒は「大吟醸雫取り 朔命(さくめい)」といい、2017年の全国新酒鑑評会で金賞をいただいた、蔵の技術を結集した酒です。古来、酒造りは神に捧げるためのものであり、物事の始まりを意味する「朔」と、命を表す「命」を合わせて「朔命」という名前には、そんな思いを込めました。このお酒は「雫取り」という自然の重力のみで絞るため、デリケートでまろやかな味わいが特徴です。
──天野
福井の地酒造りにおいて、どのような思いやこだわりを持って取り組まれているのでしょうか?
──常山酒造様
福井の地酒である以上、土地の米を使い、土地の水で、土地の人が醸す――その「地酒」をいかに表現できるかを追求したいです。そのこだわりを通して、日本酒の価値を高めたいと考えています。
──天野
素晴らしいお考えだと思います。土地の米・水・人にこだわって醸すことこそ、まさに“地酒”の本質ですね。私どもも、汐うにという福井の伝統食を扱う者として、土地に根ざしたものづくりの大切さを日々実感しています。

舌の記憶と絆は強い
──天野
天たつとの想い出話があればお聞かせ願えますか?
──常山酒造様
実は祖父が天たつ様の汐うにが好きで、熱々ご飯にのせて焼き海苔で巻いて食べている光景を鮮明に覚えています。子供の頃、私自身は汐うにが苦手だったのですが、大人になってから美味しく感じるようになり、今では思い出とともに汐うにを美味しく頂いています。舌の記憶というのは鮮明だと思います。もしかしたら人の五感に訴えかける酒、食というのがこれからの商品作りのヒントになるかもしれません。
──天野
ご家族の食卓や大切な思い出とともに語っていただけてうれしい限りです。おっしゃる通り、味や香りといった五感に訴えかける体験は、人の記憶に深く刻まれるものだと思います。私たちも「舌の記憶に残る味わい」を大切にし、ただ美味しいだけでなく、心に残る汐うにを届けたいです。

酒造りが担う地元発展への貢献
──天野
最後に、酒造りを通じて実現したい未来や、叶えたい思いを教えてください。
──常山酒造様
日本酒業界は昔からの流れで蔵ごとのこだわりを価格に転化するのが難しい面がありますが、価値ある酒を価値に見合う価格で販売し、一緒に働く人達に自分の仕事のやりがいや人生の夢を酒造りを通して叶えられる、そのような世界にしたいですね。私たちの酒蔵はただお酒を造るだけではなく原料造りなどに携わる、人と町と産業一緒に盛り上げていけるものだと感じています。地元福井のさらなる発展にも貢献していきたいです。
──天野
常山様のお話から、日本酒造りにかける強い想いと未来へのビジョンを感じ、大変共感いたしました。酒造りや食づくりは単に商品を届けるだけでなく、人や町、そして産業をも支える存在であることを改めて実感いたします。私どもも、汐うにを通じて地元の魅力を伝え、次の世代に受け継ぐ役割を担ってまいりたいと考えております。本日は貴重なお話をありがとうございました。

2017年対談
蔵元情報
常山酒造合資会社(とこやましゅぞうごうしがいしゃ)
〒910-0854 福井県福井市御幸1丁目19-10



