南部酒造場様

「食中酒」花垣と汐うにの究極の調和

「花垣」と「汐うに」が引き出すうまさの相乗効果

 

──南部酒造場様

私は長男ですが、高校卒業後大学進学の際には「家業は継がない」と決めていました。しかし大学4年になり長男としての立場を考え、継ぐことを決意。「とことん死ぬまで頑張ろう」と決めました。その決意は自分にとって大きく重たいものでした。

──天野
その転換のポイントは何かあったのですか?

──南部酒造場様
継がなければならない立場を突っぱねてきた中で、それを崩して「自分で納得する」までに時間がかかりました。やりたいこととの間で迷い、決意するまでに時間を要したのだと思います。

──天野
実は私も似たような経験がありまして。私はスノーボードがすごく好きで、大学を卒業してから3年間、山にこもってスノーボードに取り組みました。父に相談したときも「天たつに入るかどうかは置いといて、やりたいことをやれ」という言葉をもらっていろいろと挑戦でき、その経験が今の天たつの跡を継ぐ力になっています。

 

──南部酒造場様

私も高校と大学時代を通じて山岳部に所属し、ネパール遠征にも参加するなど自分のやりたいことをやってきました。祖父には「山に行くなら勘当だ」と言われたこともあります。しかし、違う世界でスポーツや冒険をした経験が、粘り強さや決断力を養い、家業に就いたときの転換期につながったと思います。

──天野 
なんだか共通点が見えて、すごく嬉しいです。

 

南部酒造場さんのお酒は、福井でも有数の美味しさで世界に発信されていますね。私は5年前に福井に戻るまで日本酒が飲めなかったのです。理由は、学生時代の日本酒のイメージや東京で飲んだ日本酒が正直あまり美味しくなかったこと。飲み方も知らなかったので、いい思い出がなくて。福井のお酒、特に花垣さんに出会い、「福井にはこんなにおいしいお酒があるんだ」と感動しました。個人的には本醸造を燗にするのが好きで、コストパフォーマンスも高いと感じています。

 

私が常々思っているのは、うちの商品は「お酒の女房役」であることです。おいしいお酒をより楽しく飲んでもらうための寄り添う存在、つまり「酒と肴の関係」についてお聞かせくださいますか?

──南部酒造場様
うちのお酒を飲んでいただいて嬉しいです。私も祖父の代から天たつさんの汐うにが大好きです。子どもは苦手なことが多い汐うにですが、私は小さい頃から大好物でした。

日本酒は食中酒ですから、お酒と料理のハーモニーが相乗効果を生みます。汐うには特に相性が高いですね。私のおすすめは、体温より少し低いぬる燗です。ウニが口の中でとろけて、塩の風味が心地よく広がり、お酒が生臭さを消しつつ旨味を引き出してくれる、非常にいいマッチングだと思います。

──天野

汐うには食べる温度によって風味が全然違います。冷蔵庫の冷たい状態よりも常温に戻した方が、香りが濃く、味わいが広がるのが私の好みです。おっしゃる通り、ぬる燗と合わせると口の中で溶けて甘みが広がり、その食感や余韻が冷たいままでは味わえない良さなんですよね。

 

──南部酒造場様
汐うには冷蔵庫から出すと固めですが、熱々のご飯に乗せると柔らかくなります。これはお酒と同じで、少し温度が上がると柔らかい味が広がるんです。ツンとした塩味が甘みに変わるように感じます。温度を上げながら楽しむのが、汐うにの美味しい食べ方だと思います。

 

 

食事を深める「食中酒」と世界でも貴重な汐うに

 

──天野 
私が今、特に気になっているのが、初代のお名前を冠した『七右衛門』というお酒です。どういったお酒でしょうか。

──南部酒造場様
当社は酒蔵としては四代目ですが、金物商から数えると享保年間創業の九代目で、その初代の名前が「七右衛門」でした。新しく造る最高峰の純米大吟醸に、初代の名を冠したいと考え名付けました。

当社では大吟醸系と純米系で味わいを分けており、純米大吟醸である『七右衛門』は、フルーティーさがありつつも、お米が持つふっくらとした旨味を尊重しています。純米大吟醸なのに「ぬる燗」でも美味しく飲めるという特徴もあります。

──天野
花垣さんのお酒には独特の香りの良さがありますね。120年前から住み着いている菌を活かして酒造りをされていると伺いました。そうした環境も含めて、いま花垣さんが目指しているお酒とはどんなものなんでしょうか?

──南部酒造場様

安らぎながらずっと飲める、ある意味究極のお酒を狙っています。飽きてしまう流行の味ではなく、基本的で安定した美味しさがあり、安定してぶれない。飲んでいるのか飲んでいないのか分からないくらい、自然にスッと入っていき、気がついたら「いいお酒だな」と思える。そして翌日「また飲みたいな」と思えるような余韻が残るお酒を作りたいと考えています。

 

──天野 
まさに「食中酒」というお話ですね。突出するのではなく、全体の調和の中で、酒の肴をより美味しくする。そういう一部としてのお酒、というイメージですね。

──南部酒造場様
食事と合わせることでそれぞれにハーモニー、いわゆるマリアージュが生まれます。食事の後半で世界でも貴重な、食中酒の楽しみを深めてくれる筆頭の存在です。

 

私はご飯を食べちゃうとお酒が止まってしまうんです。お腹が膨れすぎると味も鈍くなりますから。だからその手前で、多彩で繊細な味わいをいろんな料理と楽しみながら合わせていく。それが食中酒の楽しみだと思います。汐うには、少しの量でもいい、世界でもそう多くない地域でしか食べられない。そういう意味でも、とても貴重な食材だと思います。

 

若き技術と次世代へ。「本物」を長く伝える

 

──天野 
これからの日本酒のあり方や未来について、社長の夢をお聞かせください。

──南部酒造場様

日本人が日本の文化を大切にするのと同じように、この日本酒も残していかなければならない。そのためには、伝統的で本物の日本酒をどう残していくかが重要です。機械に頼らず手で造ることを重んじ、地元の原料にこだわる。本物をいかに長く伝えていくかが重要な課題です。製造部の杜氏たちの技術をきちんと守り、次の世代に向かって育てていかなければなりません。また、福井県外の消費者にも知っていただきたいですが、ただ広めるのではなく、きちんと本物が分かる人に伝えていきたいと考えています。

 

──天野 
今日、蔵でご挨拶しましたが、作り手の皆さんが本当にお若いんですね。

──南部酒造場様
はい、今の平均年齢は42〜43歳くらいです。今の杜氏も先代のもとで10年以上修行し、杜氏になってからも8年になります。全国的に著名な杜氏の方々が高齢化していますので、長い時間をかけて勉強し、受け継いでもらうことが大切です。

──天野 

その思いを受け継ぎながら、日本酒を伝えていかれるんですね。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

 

2015年対談

 

蔵元情報

株式会社南部酒造場

912-0081 福井県大野市元町6-10
https://www.hanagaki.co.jp/

 

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