天草の複雑な海の地形や海藻が極上ウニを育てる|九州 熊本県 天草

2025.07.28

―お話を伺った方―
濱 様

 

 

ウニと海藻を巡る天草の海の今

 

――天野
天草(あまくさ)で獲れるウニは、ムラサキウニ、ガゼウニ、アカウニでしょうか?
全国的にウニの漁獲量が減っていると聞きますが、こちらの獲れ高はいかがでしょうか?

 

――濱様
年によって漁期の大きな違いはありませんが、地区ごとに話し合いをして解禁日を決めています。今年は先々週からムラサキウニが解禁になっていますが、あまり獲れていませんね。

 

――天野
車で走って窓から浜辺を見ていて生えている海藻を探していました。天草地方では、ウニが好む海藻はどんなものですか?

 

――濱様
ワカメなども養殖しようとしているのですが、イシズミやクロチヌといった魚が食べてしまうんです。やはり温暖化で水温も高くなり、海藻の生育が難しい状況です。ワカメの養殖もなかなかうまくいきませんし、天然のワカメやヒジキなども、あまり生えなくなりました。生えても魚に食べられてしまうような状況で、本当に大変な時代です。

 

――天野
なかなかこの魚の食害は防ぎきれないですね。

 

――濱様
ワカメを守るためウニの駆除も場所によって行っています。親のウニを全部獲ってしまうということも。そうしないと親ウニが海藻を食べてしまい、磯焼けになってしまうからです。しかし、逆に言えばそれだけウニがたくさんいるということ。天草のガゼウニはいい状態のものもありますよ。アカウニかムラサキウニが主で、バフンウニはほとんどいないです。

 

天然と養殖の境界を越えるために。餌と味の関係とは

 

――天野
天たつは私で11代目となり、これも今年で創業221年目になります。「日本最古の雲丹商」と言われています。汐うには200年前に3代目が考案し、福井の塩を使って、徳川将軍家などにも納めさせていただきました。バフンウニに塩を振って、水分を抜いて凝縮して作っており、1個のウニから1グラムしか作ることができないんです。塩は結構入れるのですが、水分を抜く時に一緒に塩も落ちるので、塩辛くありません。水分も抜くので日持ちも良く、常温で2、3日持ち歩いても大丈夫です。

 

――濱様
(試食して)塩辛くないんですね。食べる機会は少ないのですが、塩辛い印象がありました。

 

――天野
私どもは日本全国からバフンウニを集めて作っていますが、やはり浜元によってウニの味が違いますね。その味の違いは、食べているものによって生まれるのではないかと思い、今、日本中の浜を回って勉強させていただいています。今回は初めて九州に来たのですが、その浜にどういった海藻が生えていて、その海藻を食べているウニの味はどういう風になるのか、というのを調べています。

 

海藻のことをお聞きしたのは、この先100年先まで日本の美味しいウニ文化を残そうと思うと、天然ウニだけでは難しいと感じています。もちろん大切にしなければならないのは間違いないのですが、それだけでは賄えなくなるだろうと思った時に、養殖、つまり「育てる漁業」に取り組まなければならないと考えています。今はキャベツを与えてウニを育てる試みも日本各地で行われていますが、食べるものによってウニの味が決まるもの。美味しいウニが育つための海藻、それが分かれば、養殖のウニでも天然を超えるウニが育つはずだと考えています。

 

――濱様
天草地方でもそうしたことを知っている人はいると思いますよ。味的には天然のウニには追いつかない、甘みが足りない、という話が聞こえてきますね。地元の人たちは、養殖ウニだと分かると、時期も違うかもしれませんが「ちょっと甘みが足りないかな」とか、そういう話をしているようです。やはり天然よりは味が落ちるのかと思って聞いていたのですが。

 

――天野
本当は養殖の方が手間もコストもかかるわけですから、天然よりも美味しくなってほしいというか、ならなければいけないのだと思っています。何を食べればどういう味になるか、ということがまだちゃんと分かっていないので、もう自分で勉強しようと思っているところです。

 

――濱様
フルーツなどを食べさせる養殖もやっているんですよね、養殖ブリなどもみかんを食べさせたりするそうじゃないですか。そういうものを食べさせたら、本当に生臭くなくて、ちょっとフルーツの匂いがするかもしれません(笑)

 

――天野
それはそれでちょっと面白さがありますね(笑)。福井にこだわらず、それぞれの美味しいウニをお客様にご紹介できるようにしたいと思っています。

 

 

餌、海藻、地形から読み解くウニの育て方

 

――天野
ウニを育てている方々は、それこそ海藻を集めて冷凍しておき、それを餌として与えるといった工夫をされていますね。それができないところは、市場などからキャベツをもらってきて与えている、といった話も聞きます。私は餌の開発をしたいと考えています。

 

――濱様
ワカメもただ与えるだけではだめだと聞いたことがあります。きちんと塩蔵されたワカメでないと、ウニがお腹を壊してしまう、といった話も聞きますね。

 

海藻を増やすため、ブルーシートを張って光合成を促すなど次の世代に資源を残すような取り組みをしていると聞いています。海藻が生い茂っていないと生態系が豊かになりません。魚に海藻を食べられてしまうと、もう枯れた磯になってしまうと思います。

 

――天野
私は海水を飲みながら全国を回っていますが、やはり海水の味が違うんですよね。これは面白いことです。昨日、壱岐にいたのですが、壱岐も南と北で海流が違うので、また海の味が全然違うんですよ。生えている海藻も違いますね。昨年は北海道をずっと一周し、それこそ海水を味見しながら、そこに生えている海藻などを生産者に聞きながら回りました。天草も、この外洋に面しているところと内側とでは海の味が違うだろうなと思っています。

 

これからウニを育てるにあたって、美味しいウニでなければ未来に残らないと思っています。養殖だからといって、天然よりも味が劣るというのも何か違う。本当に美味しいウニを育て、作っていくためにも、その餌、何を食べることで美味しくなるのかを、やはり突き止めたいと考えています。

 

――濱様
やはりこの地域の独特な点は、有明海と不知火海、そして西側の外海という異なる海域があることですね。全国を探してもこれほど多様な魚種が集まる場所はなかなかないでしょう。右を見たら有明海、左を見たら不知火海、という感じですから。

 

――天野
車で走っていると、湾は波が全くなく湖のようでした。そこからだんだん波が出てきて、外側と内側というか両側に海があるのに、全然風景が違うのが印象的です。今年は、私の代にとって一つの節目だと感じています。自然がすごい勢いで変化している今、何か行動を起こさなければ将来にウニ文化を残していけないと考えているからです。地形に関するお話もいただき、ありがとうございました。

 

2025年3月訪問

 

 

お知らせ