一本義久保本店様

汐うにと一本義、日本の食卓に宿る福

食卓に“福”を運ぶ天たつの汐うに

 

── 一本義久保本店様
もともと福井という漢字は「福が居る」と書いたそうです。徳川家に書状を送って返ってきたのがこの井になってしまって、訴えることもできずにそのままになってしまったとか。

 

──天野
私的には、福が居るという字はとても好きなんですけれども。

 

── 一本義久保本店様
私もそう思います。福が居座る、福がいてくれるとありがたい。そういう意味で天たつさんの汐うには、そういう“福のある幸せ”を運んでくれる商品だと、私は常々思っております。

 

──天野
ありがとうございます。

 

── 一本義久保本店様
昨日、汐うにをしっかりいただきました。何より嬉しいのは、「今日の食卓に汐うにが登場する」と思うだけで幸せを感じることです。
好きなものというのは、きっと皆さんもそうだと思います。その中でも汐うには特に高級珍味で、酒と食卓を格別なものにしてくれる――私は常々そう思っています。昨日も妻が食卓に出してくれまして、つい飲みすぎてしまいました。

 

──天野
うれしいお言葉をありがとうございます。
先日、私は一本義さんの「冷やおろし」をいただきましたが、とてもおいしかったです。
私が一本義さんのお酒と出会ったのは5年前。実はそれまで東京で修行していて、福井に戻ってきたのもその頃なんです。それまで日本酒はほとんど飲めませんでした。
学生時代はノリで飲むことが多く、あまり良い思い出がなかったんですね。今の若い方も、似た経験をされている方が多いのではないでしょうか。
ところが福井に戻り、地元の日本酒に出会って「こんなにおいしい日本酒があるのか」と感動しました。それ以来、私の血の中にもおいしいお酒が流れているような気がします(笑)。

 

── 一本義久保本店様
おっしゃる通り、若い方はまだお酒の飲み方に慣れていない時期に、勢いで飲んでしまって、結果的にお酒を苦手になってしまうことがあります。それは本当にもったいないことです。
私も若い頃は同じでしたが、ゆっくりと味わって飲むようになると、本当の美味しさが分かるようになりますよね。

 

 

熱燗と汐うにが奏でる、贅沢で滋味深い時間

 

──天野
久保さんご自身の、お酒のたしなみ方や酒の肴について伺いたいのですが、普段ご自宅ではどのようなものを召し上がっていますか?

 

── 一本義久保本店様
家で飲む時は、蔵元という環境のせいか、あるいは単に私が酒好きだからか、ご飯をしっかり食べるよりも、酒の肴を何品か並べて、ちびちびつまみながら飲むことが多いですね。
もちろんトンカツなどをおかずにご飯をしっかり食べるのも好きですが、夜はもっぱら肴中心です。昼はきちんとご飯をいただいています。

 

──天野
私もお酒が好きで、週に5〜6回は飲みます。うちの店は酒の肴を扱っていることもあり、主食を兼ねて肴をいただきながらお酒を楽しむことが多いですね。やはりお酒には肴が欠かせません。

 

── 一本義久保本店様
そうですね。お酒を単独で楽しむのも良いですが、私は「食と共にあってこそ、食も酒も花開く」と考えています。これは私個人の意見というより、弊社の考え方でもあります。
日本酒は間違いなく食中酒です。食卓で料理とともに味わい、幸せな時間を過ごす。食事は人生で最も身近なエンターテインメントだと思います。その中でお酒が食事をより華やかにしてくれたら嬉しい。
天たつさんの汐うにには、まさに酒のアテであり高級珍味。毎日食卓に並ぶものではないかもしれませんが、登場した日の嬉しさといったら格別です。

 

私はやはり、そのままいただくのが王道だと思います。楊枝でちびちびとほじって食べる――それがウニの醍醐味です。何かと合わせてもよいですが、私はあのままが一番。お酒と一緒にいただくと、もうたまらない幸せです。

 

以前、社員と話していた時に「豆腐ステーキに合わせてみては?」という意見が出まして、試してみたんです。豆腐の中に汐うにを埋めて焼いたのですが、うまくいかず……ウニは溶けず、豆腐は崩れ、香りだけが少し残って「ウニどこ行った?」という感じで、少し残念でした(笑)。

 

でもその後、御社から「ふりかけ」タイプの汐うにが発売されましたね。それを豆腐ステーキにかけてみたところ、これが見事に合いました。塩ウニでは難しかったのですが、ふりかけをかけると贅沢な豆腐料理になりました。ぜひ一度試してみてください。

 

──天野
粉うにを試していただけたのですね、ありがとうございます。

 

── 一本義久保本店様
もちろん食の好みは人それぞれですが、「こういう食べ方もあるんだ」と思うものがありましてね。
私の妻はウニが大好きなんですが、よくやるのが熱々のお燗に汐うにを浸すという方法なんです。これが正しいのかどうかは分かりませんので、もしダメでしたら怒ってください(笑)。
汐うにの塩辛さがやわらぎ、燗酒の熱で少しさらにまろやかになって、とてもマイルドに。甘みがぐっと引き立つんです。
もちろん塩気の強さが汐うにの魅力ではあるのですが、それが程よく和らぐことで、海苔に挟んだり、ワカメに乗せたりすると、塩気が苦手な方でも「これはうまい」と言うほどの味わいになります。

 

──天野
お酒と汐うにの味が溶け合うんですね。

 

── 一本義久保本店様
そうなんです。お酒の香りがふわっと広がり、残ったお酒も最高なんですよ。
器に残った汐うにを楊枝で寄せて燗酒に溶かすと、その一杯は格別です。滋養強壮にも良さそうで、ただうまいだけでなく、パワーが出るような味わいですね。

 

昔からこうした高級食材を使った飲み方は、本当に楽しいものです。高級食材に限らず、魚の骨などでも同じように楽しめます。染み出した酒は何杯も飲むものではありませんが、その一杯がたまらないんです。

 

 

冷酒にも燗酒にも寄り添う、懐の深い福井の味

 

──天野
久保さんは弊社の汐うにを贈り物にもお使いいただいているかと思いますが、どういった方に差し上げると喜ばれますか?

 

── 一本義久保本店様
福井以外では、まだ汐うにをご存じない方も多いんです。「こんな珍味があったのか」「こんな酒の肴があるのか」と驚かれますね。
ウニというと多くの方は生ウニを思い浮かべますが、塩漬けのウニは初めてという方も多い。特に酒好きの方にはたまらなく喜ばれます。「また送って」と言われますが、「いや、自分で買ってください」と(笑)。
私はこれを「福井の肴の宝」だと思っています。それを贈って喜ばれるのは、福井人として誇らしいことです。そして合わせるなら、やはり福井の地酒と地魚。これが最高の組み合わせだと思います。

 

──天野
久保さんが思う、汐うにに合うお酒はどんなものでしょう?

 

── 一本義久保本店様
これは難しい質問ですね。汐うにはとても懐の深い酒の肴だと思っています。
冷酒でも冷やでも燗でも、どんな温度でも受け止めてくれる。香りのあるお酒でも、清々しいお酒でも、それぞれの良さを引き出してくれる。まさに「酒をもっとおいしくする最高のパートナー」だと思います。

 

ですから「これが一番合う」とは言い切れません。ウニにも新物や熟成といった季節の違いがあるように、酒にも四季があります。暑い夏と寒い冬では飲みたい温度も違う。だからこそ、季節に合わせた召し上がり方をしていただくのが良いでしょう。

 

ただ、あまり華やかな香りのお酒は燗にすると印象が変わってしまうこともあるので、落ち着いた味わいのお酒の方が合わせやすいかも。実のところ、私自身も「汐うにに最も合う酒」をまだ探しているところです。

 

──天野
確かに季節や状況によって変わりますね。夏は冷酒で、冬は燗でいただきたい。
私も「これが一番」とは言えませんが、冬になると必ず一本義さんのグリーンラベル(普通酒)を燗にしていただくのが楽しみなんです。

 

── 一本義久保本店様
ありがとうございます。
福井で長く親しまれている弊社の代表銘柄に、緑の一本義(金印・普通酒)と赤の一本義(上撰本醸造)があります。
緑は「ふっくら辛口」、赤は「すっきり辛口」で、それぞれに根強いファンがいて、「俺は爺さんの代からこれだ」という方も多いんです。
この味は、私たちがどうこう変えるものではありません。お客様の「舌の記憶」が育ててきた味なんです。
燗酒には緑の一本義がよく合いますので、ぜひ汐うにと合わせて楽しんでいただきたいですね。

 

──天野
「変えちゃいけない」という言葉、とても共感します。私も今年で十一代目となりますが、汐うにを扱う上でその思いを常に大切にしています。ただ同時に、新しい挑戦も欠かせません。

 

 

──天野
最後に、最近副社長が進めている『伝心』というお酒について伺いたいのですが、あれは久保さんが戻られてから作られたものですか?

 

── 一本義久保本店様
『伝心』の誕生は1992(平成4)年です。私が家業に戻ってから本格的にリニューアルを行いました。
立ち上げからもう20年ほど経ちますが、当時の思いを受け継ぎながら、今も心を伝える酒として育て続けています。

 

──天野
私はグリーンラベル(金印)も好きですし、『伝心』もよくいただきます。飲んでいると、「方向を考えて作られているのだな」と感じるのですが、副社長として、これからの日本酒、そして未来の酒造りについて、どのようにお考えでしょうか。

 

── 一本義久保本店様
先ほども申し上げましたが、「一本義」の赤と緑は福井の地で長く育てていただき、「これが俺の酒だ」と言ってくださる方が多い銘柄です。
ですから、この味は変えません。お客様が求める味わいに確実に応えていく――そのために、再現性を何より大切にする。これがこの商品の位置づけです。

 

一方、『伝心』は奥越前、すなわち大野や勝山といった酒米の産地で、私たちの蔵があるこの地から平成4年に立ち上げたブランドです。
『伝心』は「変わっていくお酒」です。常に知恵を重ね、時代や人々の感性に合わせて、今求められている日本酒の姿を具現化していく――そういう思いで造っています。単なる酒造りなんですけれども、コンセプトは新しいものを追い求める酒と言えます。もちろん毎年大きく変えるわけではありませんが、「より良いものを求め続ける」その意識を持ち続けること。それが『伝心』というブランドの根幹です。

 

──天野
つまり、『伝心』は未来を見据えて進化し続けるお酒、ということですね。

 

── 一本義久保本店様
はい、そのように評価していただけると大変うれしく思います。

 

―天野
本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

 

2013年対談

 

蔵元情報
株式会社一本義久保本店
〒911-8585 福井県勝山市沢町1丁目3-1
https://www.ippongi.co.jp

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