創業から二百年を数える天たつ福井片町本店。先々代にあたる天たつ九代目、天野吉朗の新聞などの切り抜きから、ひとつ、天たつの謂れをお話いたします。
福井名産雲丹製造
天野吉朗氏
全國的に有名な
「天辰」の風味
福井名産「雲丹」は、その風味その滋養何れも愛好家の賞賛を博し、全國物産中屈指のものとして、宮内庁をはじめ畏れ多くも久邇宮、伏見宮両殿下の皇族並びに徳川侯爵、松平侯爵等の華冑界に献上或いは買上の光榮を浴し、全國的に年々その賞味ファンを増して、本懸の最も誇りとしているところであるが、夫程の名産の元祖とも云ふべきは現市内片町通り「天辰」こと天野吉朗氏の店舗である。※天たつ天野吉朗は当時の襲名。
同家の創業は確實なることは判らぬが、その記録より想像して正に三百年以上の蘆家として、福井に在って老舗中の最古とも見られている。同家は橋北の大火に遭ひ現在は其店舗も幾分狭めてはいるが、以前は片町一帯にも珍しい豪華な建物であった。先代は辰吉と云ひ「天辰」の商號もそこから生まれたものである。
又、蘆稱を天王屋五兵衛とも呼んでいた。その取引は昔時より既に全国に及び越前雲丹を江湖に知らしめると同時に、「天辰」の商號を天下に知らしめた。それほど同店の雲丹が優良品であつたことは想像に難くはない。
現主吉朗氏は明治十七年生まれの本年五十六歳で、資性實直にして眞剣主義の人、有名商店でも何等鼓吹せず自慢もせず、只々孜々として家業に従事「より良き品」を製出することに専念努力し、全く高級雲丹専門店の感を呈している、昭和八年大元帥陛下の錦旗を迎へて、一世一代の大演習が學行せらるゝに際し、煉雲丹一個を献上して、嘉納の光榮に浴するとともに、前述の如く皇族華族、名家に買上の光榮を有し、幾多の燦然たる歴史を持ってゐる其外明治十七年第一回水産博覧解並びに明治三十年第二回同博覧會に出品して有功三等賞を受領するなど、同店の製品は絶對的良品との格付けをされている謂れである。

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